たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
バレンタインデー(2009)
- 2012/12/30 (Sun)
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デパートの特設売り場。
バレンタインデーを目前にして、たくさんの商品にたくさんの女性が集まっている。
可奈は売り場をざっと見て回った後、ウロウロと店内を行き来し、気になるものを手にとっては戻し手にとっては戻しと、かれこれ1時間程悩んでいた。
せっかくだから、驚かせたいし、喜んで欲しい。
けれど。
経歴や彼の友人などから考えても、高級なものを食べ慣れているだろうことは容易に想像がつく。
その上。
――あいつの好みはよくわかんないんだよっ。
可奈は壁に拳を打ち付けたいのを我慢して、売り場を出た。
悩んだけれど、決められなかった。
最初に脳裏に浮かんだチョコレート――それは、おすそ分けでもらったときに、ひと口食べて涙が出るほど感動した、某有名ホテルのパティシエが作った「ショコラ」。
当然、値段も張る。
実際に昨日行ってみて、あまりの値段に驚き何も買わずに出てきてしまった。
しかし、やはり、あのチョコしか考えられない。
可奈は腹をくくって、再度、ホテルのラウンジへと向かった。
13日の放課後。
「あれ、燈馬君は?」
近くにいたクラスメイトに聞いてみたが、「帰ったみたいだよ」との返事
「え、そうなの? なぁんか、最近機嫌悪いんだよね。どうしたんだろ?」
「機嫌悪いの?」
「燈馬君が?」
香坂と梅宮が信じられない、といった声音を出す。
「いつもと一緒だったよねえ?」
「うん、ふつーだった」
「嘘、いつもと全然違ったじゃん! ここんとこ、ずっとむすっとしちゃってさ」
「……そんなことわかるの、アンタだけだって」
バレンタインデー当日。
想に連絡しようとして結局できなかった可奈は、想のマンションに向かっていた。
別に呼び出すつもりはなく、ポストに入れてメールをしておけば、不審物と間違われて捨てられることもないだろうと踏んだのである。
そもそも直接渡すことも想定してなかった――というか、張り切ってチョコを用意したものの、義理チョコと思われるのも本命チョコと思われるのも違う気がしているのだ。
なんてことをつらつらと考えながら歩いていると、マンションの前でばったり想と出くわしてしまった。
「お、おす」
「どうも」
「どっか行くの?」
「ええ。水原さんは?」
「うん、私もちょっとね」
言いながら、この場でチョコを渡してしまおうか、とも思った。
が、やはり想の機嫌は悪そうで……予定通りポストに入れようとマンションに視線をやる。
「僕に用事があったんじゃないんですか?」
可奈の視線を追いながら想が言う。
「そうなんだけど、でかけるんでしょ? いいよ、大したことじゃないし」
「そうですか」
じゃあ、と立ち去る想を可奈は思わず呼び止めた。
「えーっと、これ! いつも勉強みてもらったりしてるから!」
そう言って、包みを差し出した。
「今日、バレンタインデーでしょ?」
「ありがとうございます。前に聞いたことがあります。日本のバレンタインデーは欧米とは違うって」
「アメリカではどうなの?」
「恋人同士でプレゼントをしあうんですよ。花束だったりカードだったり。チョコとは限らないです」
「へー……って、恋人同士!?」
「日本にはいろんな意味があるんですよね。愛の告白だったり、お世話になっている人へのお歳暮代わりだったり。ちゃんとわかってるから大丈夫です」
想は言うが、可奈の心中は複雑である。
けれど、否定する言葉も持ち合わせていない。
「ねえ、最近、何で機嫌悪いの?」
「それは……」
「何?」
「……昨日、皆さんに何か包みを配っていたでしょ?」
恐らく、義理チョコ代わりのクッキーのことだろう。
予算オーバーのチョコを買ったせいで、義理チョコや友チョコが用意できなくなってしまった。
仕方がないので、家にある材料で作ったチョコクッキーを100円ショップのラッピング材で包むことにした。
それを昨日、クラスメイトや部活仲間、先生などに配ったのだ。
「朝一番に会ったのに、僕にはなかったなあと」
可奈は目をぱちくりさせた。
「それに最近、放課後はまっすぐ帰るし、部活のない休日も出てこなくなりましたし」
それは予算オーバーのチョコを……以下略。
しかし、それを説明するのは憚られた。
そしてそれよりも……。
「何それ。もしかして、拗ねてたの?」
「そんなんじゃありませんが」
「へえ?」
少しむくれる想を可奈は少し笑った後、さっきは聞けなかったことを聞いてみた。
「ね、どこ行くの?」
「買い物に……実は、気づいたら冷蔵庫の中が空になってまして」
「またぁ!?」
「すみません。また、です」
「しょうがないなあ。じゃあ、可奈ちゃんが美味しいご飯作ってあげるよ」
「お願いします」
こうして2人はスーパーへと向かった。
――チョコの「意味」は、この感情に名前がつくまでのお楽しみ、ということで。
□あとがき□
セーフ! 当日までにアップできました!
2009年のバレンタインデーは土曜日でした^^
バレンタインデーを目前にして、たくさんの商品にたくさんの女性が集まっている。
可奈は売り場をざっと見て回った後、ウロウロと店内を行き来し、気になるものを手にとっては戻し手にとっては戻しと、かれこれ1時間程悩んでいた。
せっかくだから、驚かせたいし、喜んで欲しい。
けれど。
経歴や彼の友人などから考えても、高級なものを食べ慣れているだろうことは容易に想像がつく。
その上。
――あいつの好みはよくわかんないんだよっ。
可奈は壁に拳を打ち付けたいのを我慢して、売り場を出た。
悩んだけれど、決められなかった。
最初に脳裏に浮かんだチョコレート――それは、おすそ分けでもらったときに、ひと口食べて涙が出るほど感動した、某有名ホテルのパティシエが作った「ショコラ」。
当然、値段も張る。
実際に昨日行ってみて、あまりの値段に驚き何も買わずに出てきてしまった。
しかし、やはり、あのチョコしか考えられない。
可奈は腹をくくって、再度、ホテルのラウンジへと向かった。
13日の放課後。
「あれ、燈馬君は?」
近くにいたクラスメイトに聞いてみたが、「帰ったみたいだよ」との返事
「え、そうなの? なぁんか、最近機嫌悪いんだよね。どうしたんだろ?」
「機嫌悪いの?」
「燈馬君が?」
香坂と梅宮が信じられない、といった声音を出す。
「いつもと一緒だったよねえ?」
「うん、ふつーだった」
「嘘、いつもと全然違ったじゃん! ここんとこ、ずっとむすっとしちゃってさ」
「……そんなことわかるの、アンタだけだって」
バレンタインデー当日。
想に連絡しようとして結局できなかった可奈は、想のマンションに向かっていた。
別に呼び出すつもりはなく、ポストに入れてメールをしておけば、不審物と間違われて捨てられることもないだろうと踏んだのである。
そもそも直接渡すことも想定してなかった――というか、張り切ってチョコを用意したものの、義理チョコと思われるのも本命チョコと思われるのも違う気がしているのだ。
なんてことをつらつらと考えながら歩いていると、マンションの前でばったり想と出くわしてしまった。
「お、おす」
「どうも」
「どっか行くの?」
「ええ。水原さんは?」
「うん、私もちょっとね」
言いながら、この場でチョコを渡してしまおうか、とも思った。
が、やはり想の機嫌は悪そうで……予定通りポストに入れようとマンションに視線をやる。
「僕に用事があったんじゃないんですか?」
可奈の視線を追いながら想が言う。
「そうなんだけど、でかけるんでしょ? いいよ、大したことじゃないし」
「そうですか」
じゃあ、と立ち去る想を可奈は思わず呼び止めた。
「えーっと、これ! いつも勉強みてもらったりしてるから!」
そう言って、包みを差し出した。
「今日、バレンタインデーでしょ?」
「ありがとうございます。前に聞いたことがあります。日本のバレンタインデーは欧米とは違うって」
「アメリカではどうなの?」
「恋人同士でプレゼントをしあうんですよ。花束だったりカードだったり。チョコとは限らないです」
「へー……って、恋人同士!?」
「日本にはいろんな意味があるんですよね。愛の告白だったり、お世話になっている人へのお歳暮代わりだったり。ちゃんとわかってるから大丈夫です」
想は言うが、可奈の心中は複雑である。
けれど、否定する言葉も持ち合わせていない。
「ねえ、最近、何で機嫌悪いの?」
「それは……」
「何?」
「……昨日、皆さんに何か包みを配っていたでしょ?」
恐らく、義理チョコ代わりのクッキーのことだろう。
予算オーバーのチョコを買ったせいで、義理チョコや友チョコが用意できなくなってしまった。
仕方がないので、家にある材料で作ったチョコクッキーを100円ショップのラッピング材で包むことにした。
それを昨日、クラスメイトや部活仲間、先生などに配ったのだ。
「朝一番に会ったのに、僕にはなかったなあと」
可奈は目をぱちくりさせた。
「それに最近、放課後はまっすぐ帰るし、部活のない休日も出てこなくなりましたし」
それは予算オーバーのチョコを……以下略。
しかし、それを説明するのは憚られた。
そしてそれよりも……。
「何それ。もしかして、拗ねてたの?」
「そんなんじゃありませんが」
「へえ?」
少しむくれる想を可奈は少し笑った後、さっきは聞けなかったことを聞いてみた。
「ね、どこ行くの?」
「買い物に……実は、気づいたら冷蔵庫の中が空になってまして」
「またぁ!?」
「すみません。また、です」
「しょうがないなあ。じゃあ、可奈ちゃんが美味しいご飯作ってあげるよ」
「お願いします」
こうして2人はスーパーへと向かった。
――チョコの「意味」は、この感情に名前がつくまでのお楽しみ、ということで。
□あとがき□
セーフ! 当日までにアップできました!
2009年のバレンタインデーは土曜日でした^^
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