たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
手をつなごう
- 2012/12/30 (Sun)
- キス早 |
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放課後。
廊下を歩いていると、珍しく文乃さんが教室に残っているのが見えた。
窓際に立って、外を眺めている。
「何見てんです?」
「っわあぁっ! びっくりした!」
ひょっこり近づいた僕に、文乃さんはびくっと振り返った。
「鉄兵くんのお迎え、いいんですか?」
「良くない! 行かなきゃ! わわ、鉄兵ごめん、すぐに行くからね!」
時計を指差すと、文乃さんはよほど慌てたのだろう、ここにはいない鉄兵くんに謝りながらカバンをつかんでバタバタと出て行った。
文乃さんを見送って、僕は再び外を見た。
部活に励む野球部やサッカー部、校外ランニングから帰ってきたらしいバレー部、そして正門から出て行く生徒たち――その中にはダントンさんと……翔馬。
――文乃さん、物憂げな目で、誰を見ていたの?
「参考書?」
「うん、慌ててて、教室に忘れてきたみたいで」
夕食時、文乃さんが参考書を貸して欲しいと僕に申し出た。
普段は問題集から目を離さないのに。
――誰を見ていて参考書を忘れたの?
僕のどこかで、カチリとスイッチの入る音がした。
「文乃さん、今日、教室の窓から何を見てたの?」
「ちょっ、ちょっと、先生! ご飯中っ」
僕は箸を置いて、後ろから文乃さんを抱きすくめた。
「黒沢くんか、翔馬? それとも、また違う誰か?」
「何それ。違うし!」
「じゃあ誰?」
「誰とかじゃなくて……」
「ん?」
追及の手を緩めない僕に観念したのか、文乃さんは真っ赤になってぼそぼそ話し始めた。
「手、つなげていいなって……」
「手?」
「手つないで帰ってる人たちがいたでしょ? 羨ましいなって」
「……」
「……おかしいよね! 毎日こうやってイチャイチャしてるのに、今さら手をつなぎたいなんて」
――ああもう!
僕は堪らなくなって、文乃さんを抱き締めた。
夕食後、文乃さんと鉄兵くんを散歩に誘い出した。
まだあんまり寒くないし、月も綺麗だ。
目に入るものを英単語で言い合いながら、公園へと向かう。
滑り台へ走る鉄兵くんに注意を促して、隣を歩く文乃さんの手をそっと握った。
文乃さんが僕を見る。
「この時間なら、誰も見てないでしょ」
片目をつぶって見せると、文乃さんは嬉しそうに「うん」と笑った。
「卒業したら、1日中手をつないでデートしようね」
「うん」
「楽しみにしてる」
それまで忘れないで。僕の手の温度を。
僕も忘れない。君の手のぬくもりを――。
廊下を歩いていると、珍しく文乃さんが教室に残っているのが見えた。
窓際に立って、外を眺めている。
「何見てんです?」
「っわあぁっ! びっくりした!」
ひょっこり近づいた僕に、文乃さんはびくっと振り返った。
「鉄兵くんのお迎え、いいんですか?」
「良くない! 行かなきゃ! わわ、鉄兵ごめん、すぐに行くからね!」
時計を指差すと、文乃さんはよほど慌てたのだろう、ここにはいない鉄兵くんに謝りながらカバンをつかんでバタバタと出て行った。
文乃さんを見送って、僕は再び外を見た。
部活に励む野球部やサッカー部、校外ランニングから帰ってきたらしいバレー部、そして正門から出て行く生徒たち――その中にはダントンさんと……翔馬。
――文乃さん、物憂げな目で、誰を見ていたの?
「参考書?」
「うん、慌ててて、教室に忘れてきたみたいで」
夕食時、文乃さんが参考書を貸して欲しいと僕に申し出た。
普段は問題集から目を離さないのに。
――誰を見ていて参考書を忘れたの?
僕のどこかで、カチリとスイッチの入る音がした。
「文乃さん、今日、教室の窓から何を見てたの?」
「ちょっ、ちょっと、先生! ご飯中っ」
僕は箸を置いて、後ろから文乃さんを抱きすくめた。
「黒沢くんか、翔馬? それとも、また違う誰か?」
「何それ。違うし!」
「じゃあ誰?」
「誰とかじゃなくて……」
「ん?」
追及の手を緩めない僕に観念したのか、文乃さんは真っ赤になってぼそぼそ話し始めた。
「手、つなげていいなって……」
「手?」
「手つないで帰ってる人たちがいたでしょ? 羨ましいなって」
「……」
「……おかしいよね! 毎日こうやってイチャイチャしてるのに、今さら手をつなぎたいなんて」
――ああもう!
僕は堪らなくなって、文乃さんを抱き締めた。
夕食後、文乃さんと鉄兵くんを散歩に誘い出した。
まだあんまり寒くないし、月も綺麗だ。
目に入るものを英単語で言い合いながら、公園へと向かう。
滑り台へ走る鉄兵くんに注意を促して、隣を歩く文乃さんの手をそっと握った。
文乃さんが僕を見る。
「この時間なら、誰も見てないでしょ」
片目をつぶって見せると、文乃さんは嬉しそうに「うん」と笑った。
「卒業したら、1日中手をつないでデートしようね」
「うん」
「楽しみにしてる」
それまで忘れないで。僕の手の温度を。
僕も忘れない。君の手のぬくもりを――。
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