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たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

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4巻 別居後

 別居生活も今日で終わり。
 私と鉄兵は、先生と同じ布団で眠った。
 久しぶりの「川の字」。
 
 先生の腕。先生の匂い――気分が昂ぶっているのか、なかなか寝つけない……。

「眠れない?」
 暗闇の中、密やかに聞こえた先生の声。
 私も小声で返す。
「うん……。ごめん、起こしちゃった?」
「寝られるわけないでしょ。やっと可愛い奥さんとその弟くんが帰ってきたのに」
 私は赤くなった。
 耳元で囁かれる声――離れている期間があっただけに、クるものがある。
 悶々としていると、先生が私の手を取った。
「匂い」
「え?」
「やっと、僕と同じ匂いに戻ったね」
 手に、先生の唇を感じる――ツン、と、鼻の奥が痛くなった。
「ふ……っ、う……っく」
「文乃さん? どうしたの?」
 先生の手が、私のほっぺに流れる涙を拭う。

「わかんな……っ、やだな、何か、先生といると涙腺が緩んじゃう……」
 先生のところに来てから、私は泣き虫になった。
 前は、泣くことなんて滅多になかったのに。

 両親が死んでから、鉄兵が私の全てだった。
 鉄兵を守ることだけ考えてた。
 それなのに。

 別居の間、鉄兵は変わらずそばにいたのに――毎日寂しかった。
 何でだろう?

 ふふ、と先生の笑う声が聞こえた。
「僕は嬉しいですよ」
「なっ……にがっ」
 先生は、鉄兵ごと私を抱き寄せる。
「君が僕の前で泣くのは、僕を信頼して甘えてくれているからでしょう?
 ――1年前、君の瞳は氷に覆われてるように見えた。それが、今はたくさんの表情を見せてくれる。
 笑顔も泣き顔も照れてる顔も――もっともっと見せてください?」

 先生の言葉に、涙が後から後から溢れてくる。
 思わず顔を覆った私の手を、先生は開かせた。
 暗闇に慣れた目が、先生の顔を映す。
 ――先生の瞳に、私が映ってる――。
 心臓が、トクンと鳴った。

 先生の顔が私に近づいて、私は目蓋を閉じる――。
「……ブンちゃ……まーぁくん」
 と、鉄兵が呟いた。

 きゃ、起きちゃった!?

 見ると、鉄兵は目を閉じてくふふ、と笑っている。

 寝言か……。
 ほっとして先生と目を見合わせ、2人で小さく噴き出した。

 先生は私のおでこにちゅっとキスをして、鉄兵と私をぎゅっと抱きしめた。
「僕を、『大事な人』に入れてくれてありがとう」
「……うん」
「僕の前では我慢しないで。僕に甘えて。――守らせて」
「うん」

 温かな、先生の腕の中。
 ――その日は数日ぶりに、ぐっすり眠ることができた。


□あとがき□
 けれど先生は逆に眠れない、と(笑)。

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