忍者ブログ

たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

赤いパンプス

「お前な、しんどかったらしんどいて言え」
 前を歩いていた平次が突然振り返った。
「え、何が?」
 和葉はとぼけたが、平次は呆れたように息をつく。
「俺が気づかんとでも思っとんのか? さっきからひょこひょこ足ひきずりやがって」
「……そんなことないもん」
「ほんなら、こんだけぎょうさん店並んどんのにぎゃあぎゃあ寄り道せんのは何でや」
「それは……何かこう、興味のひくもんないから」
「ウソつけ」
 平次はぴしゃりと言って、和葉の足元を指さした。
 ヒールの高さ5cmほどの、赤いパンプス。
 今日の約束が決まってから買ったものだ。
「それのせいやろが。おろしたてか?」
「……うん」
「慣れんもん履いてくるからや。――そこの公園寄るぞ」
 平次はさっさと公園に入ると、ベンチを顎で指して、そこに座るよう促した。
「ほれ、靴脱げ」
 和葉はもそもそと靴を脱いだ。
「あーあー、靴擦れしまくりやんけ。熱持っとるし……アホやろ、お前」
 平次は憎まれ口を叩きながら、和葉の足に濡らしたハンカチを当てる。
 傷口がしみて、和葉は唇を噛んだ。
「部屋ん中で履いて慣らしとくとかあらかじめ絆創膏貼っとくとか、何か対処しとけ」
「……うん」
 足の火照りがとれたところで、和葉の出した絆創膏を貼って手当てを終える。
「よっしゃ。終了。ほな行こか」
 平次は立ち上がり、腕を差し出した。
 和葉は意味がわからず平次を見上げた。
「何アホ面しとんねん。捕まれて。足まだ痛いやろ」
「あ、うん。ありがとう」
 和葉はまだ腑に落ちない顔で立ち上がり、おずおずと平次の腕につかまった。
「映画の時間までまだまだあるから。歩くのしんどなったらちゃんと言えよ」
「うん」
「歩くスピード、これくらいでええか?」
「うん」
「……何や、さっきから『うん』しか言わへんな」
「やって……平次が優しくて調子狂う」
「アホか。俺はいつでも優しいわ」
 そう言って平次は笑う。
 和葉もつられて笑った。
「似合わない靴を履くな」と言われなかったことが嬉しかった。
「なあ? この靴、どう思う?」
「あー? ええんちゃうか? ……けど、俺がおらんとこでは履くなよ」
「え?」
 思いがけない言葉に和葉が聞き返すと、平次は「何でもないわ」と言ってそっぽを向いた。

 ――初めてのハイヒール。
 和葉は、平次の腕をつかむ手に少しだけ力をこめた。

拍手[5回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

フリーエリア

プロフィール

HN:
はるき
性別:
非公開
Copyright ©  -- たちばな庵 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]