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たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

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男心と秋の空

 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、想はノートパソコンから顔を上げた。
「水原さん、そろそろ教室に戻りましょうか……」
 可奈にかけた想の声はしかし、どんどん小さくなっていった。
 肩に重みがかかったからだ。
 感じるのは、規則正しい暖かな寝息。
「水原さん、風邪ひきますよ」
 可奈の肩を揺するが、寝入っているようで起きる気配はない。
 昼間は暖かな陽気が続くといっても、10月に入り、空気は着実に温度を下げている。
 屋上で寝てしまっては、さすがの可奈も風邪をひいてしまうだろう。
 どうしようか、と思案しているうちに、可奈の頭はずりずりと下がっていく。
 なすすべなく狼狽する想をよそに、可奈が頭を落ち着けたのは、あぐらをかいている想の腿の上、だった。
 コンクリートの上に寝て痛くないのかな、などと考えていると、ふわりと風が吹いた。
 想は慌てて上着を脱いだ。
 可奈の体を心配したのももちろんだが、それよりも、スカートが揺れたことが大きい。
 ここは屋上よりもう一段上の給水塔。
 もともと人の往来はほとんどないし、時間が時間なので誰もいない。
 想を含め、スカートが多少動いたからといってその中が見える人間がいるわけではないのだが。
 上着を可奈にかけ、想は少し乱暴に肩を揺すった。
 授業開始のチャイムはとっくに鳴り終わっている。
「水原さん、午後の授業始まりましたよ! 起きてくださいっ」
「んん……?」
「起きましたか?」
 ――ばしゅっ。
 想がほっとしたのも束の間、繰り出されたのは可奈の拳だった。
 すんでのところで避けたそれがぱたりと落ちていくのを、想は冷や汗を浮かべながら見つめる。
「…………」
 ――やはり、我が身が可愛い。
 想はため息をついて、給水塔に背を預けた。
 可奈が起きたのは、それからたっぷり2時間後だった。


 翌日。
 想だけが風邪をひいたのはお約束、である。

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