たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
真珠の首飾り
- 2012/12/30 (Sun)
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オリキャラ目線です。
「いらっしゃいませ」
自動ドアが開く音がしたので、私は反射的に入り口を見た。
気配と共に笑顔が出るのは、この宝石店に勤めて10年以上のキャリアがなせる業だ。
おや、と思った。
入ってきたのは一人の少年だったのだ――私の知る限りでは、初めてのパターンじゃないだろうか?
自慢じゃないが、安売りをするような店ではない。
そういった雰囲気を察してか、カップルでも学生風のお客はほとんど来ないのに……。
しかもこの少年、妙に落ち着いている。
男性が一人で来ると、きょろきょろそわそわするものなのに。
いかにも慣れていない、といった雰囲気のお客にはすぐに声をかけるようにしているが、この少年は少し観察することにした。
店員に声をかけないということは、商品受け取りなどのお使いで来たのではないだろう。一体……。
と、目的のものを見つけたのか、一角にあるショーケースに近づく。
顎に指を当て数秒見ていたかと思うと、おもむろに私を見た。
「すみません、これ下さい」
凝視していたところへ目があった気まずさと、少年の言葉に驚いたことが重なって、反応が遅れてしまった。
気を取り直して、少年の指すものを見た。
……これは。
確かにこの店の中では安いほうだけれど、決して彼のような少年が買えるような品物でない。
不審に思ったが、そんなことは顔に出さず、笑顔で聞いてみる。
「ありがとうございます。失礼ですが、お母様へ?」
「い、いいえ」
冷静だった少年の顔に、さっと赤みが差した。
えっ、まさか、彼女へのプレゼントとか?
ちょっとちょっと、これはまだ早いでしょう。純情そうな少年だし、まさか騙されてたりなんてこと……。
「あら、彼女へかしら。お客様くらいのお年でしたら、ピアスなどのほうが手軽にお使いいただけるのでは」
言いながら、ピアスコーナーを案内しようとした……が。
「いえ、これを下さい」
重ねてそう言われたら「かしこまりました」と返事をする他ない。
金額の桁をひとつ間違えているのかしら、可哀想に。
金額を言ったら驚いた顔をして、「やっぱりいいです」とか言うんだろうなー。
勝手にそんなことを思いながら金額を告げると、少年は驚きもせずに、財布を取り出した。
どうやら払ってくれるらしい――この子、何者!?
「あ、ありがとうございます。お包みいたしますので、そちらにおかけになって、少々お待ちくださいませ」
少年から出された紙幣を受け取り、私はショーケースから真珠のネックレスを取り出した。
「あ、包装はしなくていいです」
――は?
「あの……プレゼントでは……?」
自分でも間抜け顔になっているという自覚はある。が、私にはそれほど意外な言葉だったのだ。
少年はまた顔を赤くする。
「多分、渡す前に包みから出すことになると思うので」
――??
さっぱりわからないけれど、それならば確かに包装する意味はない。
私はネックレスを箱に収め、そのまま店のロゴの入った紙袋に入れた。
「ありがとうございました」
少年を自動ドアまで送り、その後姿に頭を下げた。
――いつもならば記入していただく顧客カードも、今回はスルーした。
あの真珠のネックレス、誰のものになるのかしら。
全くのカンだけれど、あの少年にとって初めて買ったプレゼントじゃないだろうか。
就職してからクリスマスなんて、売り上げアップのチャンスとしか考えたことなかった。
けれど、彼に幸あれ、と、なんとなく、そう願った。
□あとがき□
3巻「ブレイク・スルー」より。
燈馬君が1人で宝石店に行ったのを考えると楽しいv
「たいした物じゃない」のとよく似た「本物」を買っちゃうのがちょっとズレてる燈馬くんらしいですよね(笑)(あれは本物だと信じて疑ってない)。
自動ドアが開く音がしたので、私は反射的に入り口を見た。
気配と共に笑顔が出るのは、この宝石店に勤めて10年以上のキャリアがなせる業だ。
おや、と思った。
入ってきたのは一人の少年だったのだ――私の知る限りでは、初めてのパターンじゃないだろうか?
自慢じゃないが、安売りをするような店ではない。
そういった雰囲気を察してか、カップルでも学生風のお客はほとんど来ないのに……。
しかもこの少年、妙に落ち着いている。
男性が一人で来ると、きょろきょろそわそわするものなのに。
いかにも慣れていない、といった雰囲気のお客にはすぐに声をかけるようにしているが、この少年は少し観察することにした。
店員に声をかけないということは、商品受け取りなどのお使いで来たのではないだろう。一体……。
と、目的のものを見つけたのか、一角にあるショーケースに近づく。
顎に指を当て数秒見ていたかと思うと、おもむろに私を見た。
「すみません、これ下さい」
凝視していたところへ目があった気まずさと、少年の言葉に驚いたことが重なって、反応が遅れてしまった。
気を取り直して、少年の指すものを見た。
……これは。
確かにこの店の中では安いほうだけれど、決して彼のような少年が買えるような品物でない。
不審に思ったが、そんなことは顔に出さず、笑顔で聞いてみる。
「ありがとうございます。失礼ですが、お母様へ?」
「い、いいえ」
冷静だった少年の顔に、さっと赤みが差した。
えっ、まさか、彼女へのプレゼントとか?
ちょっとちょっと、これはまだ早いでしょう。純情そうな少年だし、まさか騙されてたりなんてこと……。
「あら、彼女へかしら。お客様くらいのお年でしたら、ピアスなどのほうが手軽にお使いいただけるのでは」
言いながら、ピアスコーナーを案内しようとした……が。
「いえ、これを下さい」
重ねてそう言われたら「かしこまりました」と返事をする他ない。
金額の桁をひとつ間違えているのかしら、可哀想に。
金額を言ったら驚いた顔をして、「やっぱりいいです」とか言うんだろうなー。
勝手にそんなことを思いながら金額を告げると、少年は驚きもせずに、財布を取り出した。
どうやら払ってくれるらしい――この子、何者!?
「あ、ありがとうございます。お包みいたしますので、そちらにおかけになって、少々お待ちくださいませ」
少年から出された紙幣を受け取り、私はショーケースから真珠のネックレスを取り出した。
「あ、包装はしなくていいです」
――は?
「あの……プレゼントでは……?」
自分でも間抜け顔になっているという自覚はある。が、私にはそれほど意外な言葉だったのだ。
少年はまた顔を赤くする。
「多分、渡す前に包みから出すことになると思うので」
――??
さっぱりわからないけれど、それならば確かに包装する意味はない。
私はネックレスを箱に収め、そのまま店のロゴの入った紙袋に入れた。
「ありがとうございました」
少年を自動ドアまで送り、その後姿に頭を下げた。
――いつもならば記入していただく顧客カードも、今回はスルーした。
あの真珠のネックレス、誰のものになるのかしら。
全くのカンだけれど、あの少年にとって初めて買ったプレゼントじゃないだろうか。
就職してからクリスマスなんて、売り上げアップのチャンスとしか考えたことなかった。
けれど、彼に幸あれ、と、なんとなく、そう願った。
□あとがき□
3巻「ブレイク・スルー」より。
燈馬君が1人で宝石店に行ったのを考えると楽しいv
「たいした物じゃない」のとよく似た「本物」を買っちゃうのがちょっとズレてる燈馬くんらしいですよね(笑)(あれは本物だと信じて疑ってない)。
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