たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
浮気疑惑
- 2012/12/30 (Sun)
- キス早 |
- CM(0) |
- Edit |
- ▲Top
「先生ー。この大学の資料って……」
ノックもせずに開けた、「英語科教材室」。
――目に映ったのは、女の子と抱き合う先生の姿、だった。
「ふみ……、梶さん!」
私は無言でドアを閉めて、ダッシュで逃げた。
――その後のことは覚えていない。
気づいたら公園にいて、鉄兵を迎えに行く時間になっていた。
「突然お邪魔して、ごめんなさい」
アパートには帰りたくなくて、訝しげな顔をする鉄兵とトモくんのマンションへやってきた。
トモくんはまだ帰っていなかったけど、トモエちゃんが部屋に入れてくれた。
「いいえ。コーチはもう少しおそくなると思います。ゆっくりしていってください」
トモエちゃんはにっこり笑ってお茶を出してくれる。
「――どうか、したんですか?」
そっと聞かれて、涙が溢れ出した。
辛い胸の内を誰かに聞いて欲しくて、学校で見た光景を話す。
ぐすぐす泣く私に、トモエちゃんはとっても意外なことを言った。
「それは、しかたがないんじゃないでしょうか」
「……え?」
思わず顔をあげると、トモエちゃんは困ったように笑っていた。
「コーチも同じです。他にも教えている選手はたくさんいます。――道場に入ったら、わたしだけのコーチではなくなります」
「……」
「せんせいも、学校に行ったら『先生』ですから、文乃さん以外の人も見なくちゃいけません」
「そうだけど……でも」
――でも、抱きしめなくたっていいと思う。
「文乃さん、わたし、柔道の選手なんですよ」
「? 知ってるよ?」
「そのわたしがルールむしで6年間できなかったことを、せんせいは1週間のけいこだけでやったんですよ」
……トモくんとの、柔道勝負のことだ。
「スタミナとか、体格だけの話じゃないです。あれは、きもちで勝ったんですよ。文乃さんも見てたでしょう?」
私は無言で頷いた。
「あの気迫は、なまはんかなことでは出せません。文乃さんたちを取り戻すためにあんなにボロボロになって戦ったせんせいをうたがうのは、かわいそうです」
――さっきとは違う涙がこぼれて、鉄兵の手をぎゅっと握った。
「しっかりはなしあって、家出はそれからでもおそくないんじゃないでしょうか。
もし浮気だったら、コーチがこんてんぱんにやっつけてくれると思いますよ」
トモエちゃんは笑顔で言うけど……それは血を見ることになるんじゃ。
私は恐ろしいものを感じつつ、立ち上がった。
「……そうだね。ちゃんと、話を聞いてみる。それで浮気だったら、改めてお世話になります」
ペコリと頭を下げて、トモくんのマンションを後にした。
ガチャガチャガチャ、バタン!
――いつになく、乱暴にドアが開けられた。
「文乃さん!?」
走ってきたのか、先生は汗だくで、ジャケットとネクタイを手に持った姿だ。
私はテーブルの前で座ったまま、立ち上がることもせずに先生を出迎えた。
「おかえりなさい」
「良、かった……いてくれて……」
先生は大きく息を吐いて、周りを見回す。
「鉄兵くんは?」
「龍せんせいに預けてある。今から、重要な話をするから。――何のことか、わかるでしょ?」
「はい……」
先生は私の向かい側に正座した。
「――今日、学校で見たアレ、は、どういうこと?」
先生は私の問いに真顔で答える。
「生徒のプライバシーに関わるから、理由は言えない。でも信じて欲しい。誓って、やましいことはしていない」
「誓うって、何に?」
――少しの、沈黙。
先生の真っ直ぐな視線が、私を射抜いた。
「……指輪と、君のご両親に」
「……っ」
思わず、胸元の指輪を握り締めた。
涙が次々湧いて出てくる。
先生が私を優しく抱きしめる。
手が重ねられて、導かれるままにゆっくり開くと、先生は指輪にキスをした。
私の両頬を包んで、おでこに、まぶたに口づける。その後、今度は強く抱きしめられた。
「僕は教師だから、この胸や腕を他の生徒のために使うこともある。
でも、僕の気持ちと唇は、君だけのものだよ」
「うん……」
――本当は、そんなの嫌だって言いたい。先生の全ては私だけのものだって言って欲しい。
でも。
そんな先生だから、好きになったんだ――。
先生の首に手を回して、ぎゅっと力を込めた。
途端に聞こえた「つっ」という声。
「先生?」
先生は痛そうな顔を苦笑に変えた。
「何でもありませんよ」
「何でもないわけないじゃんっ」
「あ、こらっ」
止めるのも聞かず、先生のシャツを無理矢理はだけさせた。
「何これ!?」
すると、先生の首周りにくっきりと残る痣が出てきた。
先生は苦笑を深める。
「実は、アパートには帰ってないかと思って、智之さんのマンションに寄りまして。で……」
「シメられたの!?」
「まあ、そうですね。『文乃がオレのところに来るような何をしたんだ』って」
いやー、オトされそうになるなんて何年ぶりですかねぇ、なんてのん気なこと言ってる。
「ご、ごめんね……」
「いえ、文乃さんを不安にさせてしまったのは事実ですし。それに、半分はヤキモチですよ」
「え?」
「智之さんの前で、文乃さんのことについてトモエさんと堂々と内緒話をしたのも同然ですから」
先生は悪戯っぽく笑う。
「さ、そろそろ鉄兵くんを迎えに行きましょう?」
先生が立ち上がって、手を差し伸べる。
私はその手をとって立ち上がった。
「うんっ」
「おー、来た来た」
龍せんせいの部屋のチャイムを押すと、鉄兵と2人で出迎えてくれた。
「ごめんねー、鉄兵。龍せんせいも、いつもごめんなさい」
鉄兵は先生に抱っこされながら、私と先生を交互に見る。
「ブンちゃとまーくん、なかなおり?」
「うん、仲直りしたよ。鉄兵くんにも心配かけちゃったね」
「よかったね。ケンカはめっよ」
「ハイ。気をつけます」
眉を吊り上げる鉄兵と、それに頭を下げる先生。
その様子をクスクス笑いながら見ている私に、龍先生が囁いた。
「ブンちゃん、まーくんの首のアレ……ちょっとやりすぎじゃない?」
「あっ、あたしじゃなーーーいっ!」
ノックもせずに開けた、「英語科教材室」。
――目に映ったのは、女の子と抱き合う先生の姿、だった。
「ふみ……、梶さん!」
私は無言でドアを閉めて、ダッシュで逃げた。
――その後のことは覚えていない。
気づいたら公園にいて、鉄兵を迎えに行く時間になっていた。
「突然お邪魔して、ごめんなさい」
アパートには帰りたくなくて、訝しげな顔をする鉄兵とトモくんのマンションへやってきた。
トモくんはまだ帰っていなかったけど、トモエちゃんが部屋に入れてくれた。
「いいえ。コーチはもう少しおそくなると思います。ゆっくりしていってください」
トモエちゃんはにっこり笑ってお茶を出してくれる。
「――どうか、したんですか?」
そっと聞かれて、涙が溢れ出した。
辛い胸の内を誰かに聞いて欲しくて、学校で見た光景を話す。
ぐすぐす泣く私に、トモエちゃんはとっても意外なことを言った。
「それは、しかたがないんじゃないでしょうか」
「……え?」
思わず顔をあげると、トモエちゃんは困ったように笑っていた。
「コーチも同じです。他にも教えている選手はたくさんいます。――道場に入ったら、わたしだけのコーチではなくなります」
「……」
「せんせいも、学校に行ったら『先生』ですから、文乃さん以外の人も見なくちゃいけません」
「そうだけど……でも」
――でも、抱きしめなくたっていいと思う。
「文乃さん、わたし、柔道の選手なんですよ」
「? 知ってるよ?」
「そのわたしがルールむしで6年間できなかったことを、せんせいは1週間のけいこだけでやったんですよ」
……トモくんとの、柔道勝負のことだ。
「スタミナとか、体格だけの話じゃないです。あれは、きもちで勝ったんですよ。文乃さんも見てたでしょう?」
私は無言で頷いた。
「あの気迫は、なまはんかなことでは出せません。文乃さんたちを取り戻すためにあんなにボロボロになって戦ったせんせいをうたがうのは、かわいそうです」
――さっきとは違う涙がこぼれて、鉄兵の手をぎゅっと握った。
「しっかりはなしあって、家出はそれからでもおそくないんじゃないでしょうか。
もし浮気だったら、コーチがこんてんぱんにやっつけてくれると思いますよ」
トモエちゃんは笑顔で言うけど……それは血を見ることになるんじゃ。
私は恐ろしいものを感じつつ、立ち上がった。
「……そうだね。ちゃんと、話を聞いてみる。それで浮気だったら、改めてお世話になります」
ペコリと頭を下げて、トモくんのマンションを後にした。
ガチャガチャガチャ、バタン!
――いつになく、乱暴にドアが開けられた。
「文乃さん!?」
走ってきたのか、先生は汗だくで、ジャケットとネクタイを手に持った姿だ。
私はテーブルの前で座ったまま、立ち上がることもせずに先生を出迎えた。
「おかえりなさい」
「良、かった……いてくれて……」
先生は大きく息を吐いて、周りを見回す。
「鉄兵くんは?」
「龍せんせいに預けてある。今から、重要な話をするから。――何のことか、わかるでしょ?」
「はい……」
先生は私の向かい側に正座した。
「――今日、学校で見たアレ、は、どういうこと?」
先生は私の問いに真顔で答える。
「生徒のプライバシーに関わるから、理由は言えない。でも信じて欲しい。誓って、やましいことはしていない」
「誓うって、何に?」
――少しの、沈黙。
先生の真っ直ぐな視線が、私を射抜いた。
「……指輪と、君のご両親に」
「……っ」
思わず、胸元の指輪を握り締めた。
涙が次々湧いて出てくる。
先生が私を優しく抱きしめる。
手が重ねられて、導かれるままにゆっくり開くと、先生は指輪にキスをした。
私の両頬を包んで、おでこに、まぶたに口づける。その後、今度は強く抱きしめられた。
「僕は教師だから、この胸や腕を他の生徒のために使うこともある。
でも、僕の気持ちと唇は、君だけのものだよ」
「うん……」
――本当は、そんなの嫌だって言いたい。先生の全ては私だけのものだって言って欲しい。
でも。
そんな先生だから、好きになったんだ――。
先生の首に手を回して、ぎゅっと力を込めた。
途端に聞こえた「つっ」という声。
「先生?」
先生は痛そうな顔を苦笑に変えた。
「何でもありませんよ」
「何でもないわけないじゃんっ」
「あ、こらっ」
止めるのも聞かず、先生のシャツを無理矢理はだけさせた。
「何これ!?」
すると、先生の首周りにくっきりと残る痣が出てきた。
先生は苦笑を深める。
「実は、アパートには帰ってないかと思って、智之さんのマンションに寄りまして。で……」
「シメられたの!?」
「まあ、そうですね。『文乃がオレのところに来るような何をしたんだ』って」
いやー、オトされそうになるなんて何年ぶりですかねぇ、なんてのん気なこと言ってる。
「ご、ごめんね……」
「いえ、文乃さんを不安にさせてしまったのは事実ですし。それに、半分はヤキモチですよ」
「え?」
「智之さんの前で、文乃さんのことについてトモエさんと堂々と内緒話をしたのも同然ですから」
先生は悪戯っぽく笑う。
「さ、そろそろ鉄兵くんを迎えに行きましょう?」
先生が立ち上がって、手を差し伸べる。
私はその手をとって立ち上がった。
「うんっ」
「おー、来た来た」
龍せんせいの部屋のチャイムを押すと、鉄兵と2人で出迎えてくれた。
「ごめんねー、鉄兵。龍せんせいも、いつもごめんなさい」
鉄兵は先生に抱っこされながら、私と先生を交互に見る。
「ブンちゃとまーくん、なかなおり?」
「うん、仲直りしたよ。鉄兵くんにも心配かけちゃったね」
「よかったね。ケンカはめっよ」
「ハイ。気をつけます」
眉を吊り上げる鉄兵と、それに頭を下げる先生。
その様子をクスクス笑いながら見ている私に、龍先生が囁いた。
「ブンちゃん、まーくんの首のアレ……ちょっとやりすぎじゃない?」
「あっ、あたしじゃなーーーいっ!」
PR
カレンダー
カテゴリー
フリーエリア
プロフィール
HN:
はるき
性別:
非公開
この記事へのコメント