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たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

カテゴリー「QED」の記事一覧

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40巻 四角関係後

 おつき合い設定。糖度高いです。
 そして超短いです。

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・・・続きはこちら

41巻 「バルキアの特使」行間

 トントン。

「はぁーい」

 可奈が勢いよくドアを開けると、その先には心底呆れた顔をした想が立っていた。

「…水原さん。お願いですから不用意にドアを開けないでください。昼間、街を見たでしょう」
「だーいじょうぶ」
 だって、という可奈の言葉が銃声にかき消された。
 
 ――そんなに遠くない。

「今までと同じに考えないでください。絶対に1人では行動しないように。――いいですね」

 いつにない念の押しように、可奈は無言で頷く。

 その様子を見て、想はようやく部屋へ入ってきた。

「僕の部屋は隣です。出かけるときも僕かアルが迎えに来ますから、それまで部屋を出ないでくださいね」
「わかったわかった」

「――で、警部は何と?」
「父さんは家にいなかった。母さんは『帰ってくる前にまた連絡しなさい』って」
「……どこにいるか、言いましたか?」
「もちろん。燈馬くんと一緒だってことも言ったよ。『あらまあ、気をつけて』だって」

 娘が治安の悪い所にいるとわかれば当然、出てくる言葉だろう。
 ……そう思おう。

「学校には、明日、母さんが連絡してくれるって」

 可奈はぼすん、と勢いよくベッドに腰掛けた。

「てかさ、ずるいよ。1人だけ学校休んで海外に来る予定だったなんて」

 想は呆れながらも少し笑ってしまう。
 可奈は決して鈍感な娘ではないが、コトが大きすぎて理解していないのかもしれない。

 けれど、この屈託のなさには救われる。 

「明日はオランダに行きますからね。朝食は7時にしましょう」
「え、それも迎えに来るの?」
「当然でしょう」
「もうめんどくさいな! ならいっそ、一緒の部屋の方が良かったんじゃない?」
「なっ……!」

 実は、アルが急きょ取り直そうとした部屋はツインだった。
 もちろん、想と可奈が「そういう仲」だと思ったからだ。

 それを説得し、誤解を解いて2部屋取ってもらったというのに、あっさり何を言うのか。

 ナイスアイディア、とでも言いたげな可奈に、想はこれ見よがしに大きなため息をついた。

「何よ」
「水原さんは幸せな人ですね」
「どーいう意味だよ」
「言葉どおりの意味です。
 ――くれぐれも言いつけは守ってくださいね。守れなければ強制送還です。
 パスポートを持ってないことをお忘れなく」
「くっ……!」
「ではお休みなさい」

 想はそれだけ言うと、可奈の部屋を出た。

 ――屈託がないのも問題だ。


□あとがき□
 ええ、皆さん、思いましたよねぇ?(笑)
 可奈ちゃん、パスポートと着替えはどうしたんだ?
(バルキアには入れても、オランダに入れるのか? そして帰りはどうするの??)
(あの治安状況で可奈ちゃんのような服が買えるのか?)

 そして、学校では
「また可奈と燈馬君2人で海外だって」
「何回、婚前旅行するつもりだよ!」
「おいおい~、誰か学生の本分教えてやれよ!」
 という会話がなされていることでしょう(笑)。

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ポニーテールとシ/ュ/シ/ュ

 ここのところ、可奈は想のマンションに来てはDVDを観ている。
「ポニーテール……風の中~♪ ……っと、こうか。あれ、逆だ」

 DVDで流れているのは、南の島の砂浜で踊る水着姿の少女たち。
 可奈は、それを練習をしているのだ。

 巷で人気のアイドルグループらしいが、当然、想にはわからない。

「ちょっと休憩~」
 可奈がそう言ってソファに座り込んだので、想は飲み物を出しながら聞いてみた。
「どうしてその曲をコピーしてるんですか?」
 可奈は飲み物を受け取って「ありがとう」と言ってから、理由を説明する。
「今度の『3年生を送る会』の余興なの。髪がショートの子は歌担当で、髪が長い子はポニーテールして踊るんだよ」
「えっ、まさか水着で!?」
 可奈が画面を指差すから思わずそう言うと、一瞬驚いた顔を見せ、その後けらけら笑った。

「んなわけないじゃん! 3月の道場だよ? 寒くて踊るどころじゃないよ。制服か道着じゃない?」
「寒くてって……」
 ――そういう問題じゃないと思うのだが。

 と、可奈の携帯電話が鳴った。

「はいはーい。どしたの? 曲? 今も練習してたよ。うん、だいぶ覚えた。
 ――衣装? 制服か道着でしょ? ええっ!? いやでも、それはちょっと。
 わかるけどさあ……」

 珍しく、可奈の歯切れが悪い。
 可奈は、電話の応対をしながら想をちらりと見た。

「と、とにかく、明日のミーティングで相談しようよ。ね? じゃあ、明日ね。バイバイ」

 そう言って、可奈は電話を切った。

 可奈の受け答えの返事からして――。
 想はため息混じりに「尋問」を始めた。

「剣道部の方ですか?」
「あーうん、そう」
「――その曲の、衣装の相談のようでしたね?」
「……うん。――水着で踊ろうなんて言い出して」

 やっぱり。
 想は大きく息を吐いた。

「余興が先輩にウケたら、夏の合宿にカンパしてもらえるんだよね。それで張り切っちゃってるみたいで」
「…………」
「あ、でも、まだ決定じゃないよ。明日のミーティングで話し合うことになったから」
「…………」
「通るわけないって。私も反対するしさ」
「…………」
「もーっ! 何なの!」

 頬杖をついて無言のまま可奈を見る。
 可奈は視線に耐えかねたように机を叩いて立ち上がった。
「言いたいことがあるなら言ったらいいじゃん!」

「別に」
 想は姿勢はそのままにそっぽを向いた。
「剣道部の行事ですから、僕が口を出すことではありませんし」

「だったらじっと見るのやめてよ」
「わかりました」

 想はそう言って、いつもの席に戻り、パソコンを操作を再開した。

「……何よ」
「何ですか?」
「どうして何も言わないの」
「言うべきことがないからですが?」
「――もういいっ!」

 そっけなく返すと、可奈はクッションを投げて拗ねてしまった。


 しばらくパソコンに向かう――が、こちらを見ている可奈がずっと目の端に映っている。
 前触れなしにパソコンから目を移すと、不意をつかれた可奈と目が合った。
 
「何ですか?」
「――何が?」
「どうしてこちらを見るんです?」
「別にっ」
 今度は可奈がそっぽを向いた。
「そうですか」

 視線をパソコンに戻す。
 そして、目の端にはこちらを見ている可奈が映る。

「水原さん。僕に言うことがあるんじゃないですか?」
「何を言うのよ」
「さあ、何でしょう」

 想はパソコンのモニターから目を離さない。
 目の端から可奈が消えた。と思ったら、隣に来ていた。

「水原さん?」
「……っ。水着を着なくていいように、協力してクダサイ」

 悔しそうな様が可愛い、なんて思ってしまう。

「水着で踊りたくないのは、寒いから、ですか?」
「そ、そうだよ。風邪ひいちゃったら、しばらく燈馬君のご飯も作れなくなるでしょ? そうなったら困るよね?」
「それなら、ヒーターで道場を暖めておいたらいいんじゃないですか? 春休みだったら、学校の備品も使ってないでしょうから充分な数が集まるでしょう」
「そうじゃなくて!」
「違うんですか?」

 座ったまま、可奈を見上げる。
「本当の理由を言ったら、衣装が制服になる方法を教えてあげます」

「~~~~~燈馬君のイジワルっ!」

 真っ赤になる可奈に少し笑って、想は次の言葉を待った。


□あとがき□
 某人気アイドルの曲をモチーフに。タイトルにスラッシュを入れるという暴挙(念のために、ね)。
 PV見るたびに「可奈ちゃんがいそうだ」と思ってしまう(笑)。

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37巻後

 事件から一夜。
 午後になってようやく台風も落ち着き、静岡県警がやってきた。

 信楽の身柄を引き渡し、簡単な事情聴取を終えて、可奈、想、マイセンは取調室代わりの部屋から出た。
 笹塚もすぐに開放されたが、「他県の事情聴取や捜査なんて滅多に見られない」と言って居残っている。

 何となく部屋に戻る気になれず、可奈が食堂に入って腰を下ろすと、想とマイセンもそれに倣った。

 ふと、マイセンが口を開いた。

「燈馬。あなた、日本を出る気はないのですか?」
 想は質問の意図をはかりかねてかすかに首をひねった。
「日本には飛び級制度がないと聞きました。あなたのその頭脳を高校生として埋もれさせておくのは人類の損失です。――海外への留学を考えたことは?」
 想は気まずそうに答える。
「……それは。
 僕、実はMITを卒業してまして……日本には去年の春に帰ってきたんです」

 想が最後まで言い終えないうちに、マイセンが何か言った。
 早口の英語で可奈には聞き取れない。
 けれど、最後に「with us」と聞こえた気がして、可奈は咄嗟に手を伸ばした。

「光栄なお話ですが、今はこの生活が気に入っているので」
 想の返答は、はっきり日本語だった。

 驚くマイセンを、想は真っ直ぐ見返す。
「彼女がわからない言語で話をする気はありません」

「そう」
 マイセンは苦笑する。
「『今は』と言ったわね。将来的にはわからない?」
「――そうですね。
今の高校を卒業するつもりではいますが、その先のことはまだ考えていなくて」
 カタン、と音を立てて、マイセンが立ち上がる。
「FBIはあなたを歓迎しますよ。その気になったらいつでも連絡してちょうだい」
 そう言って、食堂から出て行った。

 想の服をつかむ可奈の手には、小柄な体には似つかわしくない骨ばった手が重ねられていた。

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