たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
【10話妄想】2
- 2012/12/30 (Sun)
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……。
…………。
………………。
……扉の向こうで声がする。
1人暮らしのこのマンションで、誰かがいるわけがないのに――。
一応、「高級」の部類に入るマンションだ。
隣や廊下の声が聞こえるような部屋ではない。
なのに、なぜ――?
想はまぶたを上げた。
いつもより重く感じるのは気のせいだろうか。
うっすら目を開けるとドアが開き、薄暗かった部屋に光が差し込むのが見えた。
「あ、燈馬君、目が覚めた?」
「水原さん?」
可奈がドアの隙間から顔を出す――なぜ、可奈がいるのだろう?
起き上がろうとすると、可奈が駆け寄ってきた。
「ダメだよ、急に起きちゃ。燈馬君、倒れたんだよ。覚えてない?」
「倒れた――」
そうだ、放課後、この部屋で可奈に勉強を教えていて――帰る可奈を送るために立ち上がろうとしてからの記憶がない。
そのときに倒れたのだろう。
「そうですか。――ところで、水原さんはなぜここに?」
「目の前で倒れられて、放っとけるわけないじゃん! 勝手に悪いとは思ったけど、目が覚めるまで泊まらせてもらってたよ」
「泊まらせて……?」
可奈の言葉に驚いて部屋を見てみると、寝室の片隅に見慣れない布団が畳んであってギョッとする。
「警部には何て言ってあるんですか!?」
対する可奈はきょとんとする。
「何てって、『燈馬君が倒れたから、看病する』って言ったよ。休まずに学校行くなら泊まってもいいって。この布団もお父さんに運んでもらったんだよ。燈馬君の家、客用布団なさそうだし」
……。
あまりの放任主義に、想は絶句する。
想の様子など全く意に介さず、可奈は呑気なものだ。
「燈馬君、お腹空いてない? 3日間も眠ってたんだよ。お粥かうどんでも作ろうか」
……3日?
「しまった! ロキにメールしないと……!」
再度、起き上がろうとした想を制したのは、可奈とは別の声だった。
「俺ならここにいるぜ」
「ロキ!」
「過労と睡眠不足だってな。連絡が来ないから来てみれば、お前は!」
「ちょっとちょっとロキさん!」
怒鳴るロキを、可奈が慌てて止める。
「燈馬君は目が覚めたばかりなんだから。……話が見えないんだけど、燈馬君が倒れたのとロキさんと、何か関係があるの?」
2人を交互に見る可奈に、想が目を伏せたまま話始めた。
「……MITでのプロジェクト、最初の予定どおり、僕も参加してるんです」
「えっ?」
「後任が見つかるまで、という約束なんですが、なかなか適任者がいないみたいで……」
「当たり前だろ」
ロキの口調は荒いままだ。
「お前レベルの人材がそうそういるわけないだろ。もっと自分の価値を自覚しろ!」
「……」
「ボストンとの時差が13時間。ちょうど昼夜逆転だな。夜に研究して、昼間は行かなくていい学校か? そんな片手間にできるプロジェクトじゃないってわかってるだろ。挙句の果てに倒れてんじゃねえよ」
「……ごめん」
「ロキさん、落ち着いてってば」
「元はといえば、お前のせいだろうが」
「私?」
ロキの矛先が可奈へ向く。
「こいつは完全にアメリカに帰ってくるつもりでいたんだ。住む部屋を契約して荷物も全部送って。それをお前が」
「それは違う」
想がロキを遮った。
「水原さんは、アメリカに帰っても頑張れって言ってくれた。自分で日本に残ると決めたんだ。水原さんは関係ない」
「燈馬君……」
想は、可奈の視線を感じながらロキを真っ直ぐ見つめた。
視線を外したのは、ロキの方だった。
「あーあ、やってらんねえよ」
「ロキ?」
「帰るわ。俺だって仕事山積みなんだよ」
「帰るって」
突然の言葉に、想と可奈は唖然とする。
ロキは想に近づき、人差し指を立てた。
「お前の心配するのは水原だけじゃないんだぞ。教授だって、あの年で日本に来るって聞かなかったんだからな」
「……」
思わぬ言葉に、想は口をつぐむ。
うな垂れる想を見て、ロキはため息をついた。
「燈馬はオンナにウツツを抜かして日本から出られなくなりました、って教授には言っとくよ」
「ロキ!」
大声を出す想を見て、ロキは笑う。
「冗談だよ。けど、お前はもっと自分を大切にしろ。わかったな」
「うん……ごめん。ありがとう」
「じゃあな。――水原、燈馬の監督頼むな」
「あ、うん」
思わず頷いた可奈を見て、ロキは出て行った。
「びっくりした~」
可奈はまだドアを見ている。
「そうですね」
想が頷くと、可奈の厳しい視線が向けられた。
「ロキさんだけじゃないよ、燈馬君にもびっくりだよ! 大変なら大変って何で言わないの! 知ってたら、宿題手伝ってとか言わなかったのに!」
「すみません……」
「謝るだけじゃダメだよ。ロキさんからも頼まれちゃったし、今度からはちゃんと言ってね。
――さ、そうと決まればご飯にしよう。お粥とうどん、どっちがいい?」
「では、お言葉に甘えてお粥をお願いします」
「はいはい」
可奈が寝室を出て行く。
想はベッドに倒れ込み、息を吐いた。
――甘かった、と思う。
体力に自信があるわけではなかったが、まさか倒れるなんて思ってもみなかった。
たくさんの人に迷惑と、そして「心配」をかけた。
ロキや教授の顔、そして今後のこと――いろんなことに頭を巡らせていると、いい匂いがしてきた。
「燈馬君、できたよ」
寝室のドアが開き、可奈が土鍋の載った盆を持って入ってくる。
「熱いから気をつけてね」
「はい」
想は起き上がり、盆ごとお粥を受け取った。
――とりあえず、食べて休んで。
今後のことはそれから考えよう。
「いただきます」
想は手を合わせ、土鍋の蓋を取った。
□あとがき□
最終話後。
アメリカ行きをドタキャンしたって、プロジェクトまでやめるわけにはいかなかったんじゃないか、という妄想。
1日メールが来ないからってわざわざアメリカから駆けつけたロキ……燈馬君のこと、大好きだな(笑)。
ボストンとの時差は本来14時間だそうですが、3月からサマータイムに入るのでこの時点では13時間の時差になる、はずです。
……しかし、3月から「サマータイム」って……ボストンて、まだまだ寒いんじゃないのか?(汗)
…………。
………………。
……扉の向こうで声がする。
1人暮らしのこのマンションで、誰かがいるわけがないのに――。
一応、「高級」の部類に入るマンションだ。
隣や廊下の声が聞こえるような部屋ではない。
なのに、なぜ――?
想はまぶたを上げた。
いつもより重く感じるのは気のせいだろうか。
うっすら目を開けるとドアが開き、薄暗かった部屋に光が差し込むのが見えた。
「あ、燈馬君、目が覚めた?」
「水原さん?」
可奈がドアの隙間から顔を出す――なぜ、可奈がいるのだろう?
起き上がろうとすると、可奈が駆け寄ってきた。
「ダメだよ、急に起きちゃ。燈馬君、倒れたんだよ。覚えてない?」
「倒れた――」
そうだ、放課後、この部屋で可奈に勉強を教えていて――帰る可奈を送るために立ち上がろうとしてからの記憶がない。
そのときに倒れたのだろう。
「そうですか。――ところで、水原さんはなぜここに?」
「目の前で倒れられて、放っとけるわけないじゃん! 勝手に悪いとは思ったけど、目が覚めるまで泊まらせてもらってたよ」
「泊まらせて……?」
可奈の言葉に驚いて部屋を見てみると、寝室の片隅に見慣れない布団が畳んであってギョッとする。
「警部には何て言ってあるんですか!?」
対する可奈はきょとんとする。
「何てって、『燈馬君が倒れたから、看病する』って言ったよ。休まずに学校行くなら泊まってもいいって。この布団もお父さんに運んでもらったんだよ。燈馬君の家、客用布団なさそうだし」
……。
あまりの放任主義に、想は絶句する。
想の様子など全く意に介さず、可奈は呑気なものだ。
「燈馬君、お腹空いてない? 3日間も眠ってたんだよ。お粥かうどんでも作ろうか」
……3日?
「しまった! ロキにメールしないと……!」
再度、起き上がろうとした想を制したのは、可奈とは別の声だった。
「俺ならここにいるぜ」
「ロキ!」
「過労と睡眠不足だってな。連絡が来ないから来てみれば、お前は!」
「ちょっとちょっとロキさん!」
怒鳴るロキを、可奈が慌てて止める。
「燈馬君は目が覚めたばかりなんだから。……話が見えないんだけど、燈馬君が倒れたのとロキさんと、何か関係があるの?」
2人を交互に見る可奈に、想が目を伏せたまま話始めた。
「……MITでのプロジェクト、最初の予定どおり、僕も参加してるんです」
「えっ?」
「後任が見つかるまで、という約束なんですが、なかなか適任者がいないみたいで……」
「当たり前だろ」
ロキの口調は荒いままだ。
「お前レベルの人材がそうそういるわけないだろ。もっと自分の価値を自覚しろ!」
「……」
「ボストンとの時差が13時間。ちょうど昼夜逆転だな。夜に研究して、昼間は行かなくていい学校か? そんな片手間にできるプロジェクトじゃないってわかってるだろ。挙句の果てに倒れてんじゃねえよ」
「……ごめん」
「ロキさん、落ち着いてってば」
「元はといえば、お前のせいだろうが」
「私?」
ロキの矛先が可奈へ向く。
「こいつは完全にアメリカに帰ってくるつもりでいたんだ。住む部屋を契約して荷物も全部送って。それをお前が」
「それは違う」
想がロキを遮った。
「水原さんは、アメリカに帰っても頑張れって言ってくれた。自分で日本に残ると決めたんだ。水原さんは関係ない」
「燈馬君……」
想は、可奈の視線を感じながらロキを真っ直ぐ見つめた。
視線を外したのは、ロキの方だった。
「あーあ、やってらんねえよ」
「ロキ?」
「帰るわ。俺だって仕事山積みなんだよ」
「帰るって」
突然の言葉に、想と可奈は唖然とする。
ロキは想に近づき、人差し指を立てた。
「お前の心配するのは水原だけじゃないんだぞ。教授だって、あの年で日本に来るって聞かなかったんだからな」
「……」
思わぬ言葉に、想は口をつぐむ。
うな垂れる想を見て、ロキはため息をついた。
「燈馬はオンナにウツツを抜かして日本から出られなくなりました、って教授には言っとくよ」
「ロキ!」
大声を出す想を見て、ロキは笑う。
「冗談だよ。けど、お前はもっと自分を大切にしろ。わかったな」
「うん……ごめん。ありがとう」
「じゃあな。――水原、燈馬の監督頼むな」
「あ、うん」
思わず頷いた可奈を見て、ロキは出て行った。
「びっくりした~」
可奈はまだドアを見ている。
「そうですね」
想が頷くと、可奈の厳しい視線が向けられた。
「ロキさんだけじゃないよ、燈馬君にもびっくりだよ! 大変なら大変って何で言わないの! 知ってたら、宿題手伝ってとか言わなかったのに!」
「すみません……」
「謝るだけじゃダメだよ。ロキさんからも頼まれちゃったし、今度からはちゃんと言ってね。
――さ、そうと決まればご飯にしよう。お粥とうどん、どっちがいい?」
「では、お言葉に甘えてお粥をお願いします」
「はいはい」
可奈が寝室を出て行く。
想はベッドに倒れ込み、息を吐いた。
――甘かった、と思う。
体力に自信があるわけではなかったが、まさか倒れるなんて思ってもみなかった。
たくさんの人に迷惑と、そして「心配」をかけた。
ロキや教授の顔、そして今後のこと――いろんなことに頭を巡らせていると、いい匂いがしてきた。
「燈馬君、できたよ」
寝室のドアが開き、可奈が土鍋の載った盆を持って入ってくる。
「熱いから気をつけてね」
「はい」
想は起き上がり、盆ごとお粥を受け取った。
――とりあえず、食べて休んで。
今後のことはそれから考えよう。
「いただきます」
想は手を合わせ、土鍋の蓋を取った。
□あとがき□
最終話後。
アメリカ行きをドタキャンしたって、プロジェクトまでやめるわけにはいかなかったんじゃないか、という妄想。
1日メールが来ないからってわざわざアメリカから駆けつけたロキ……燈馬君のこと、大好きだな(笑)。
ボストンとの時差は本来14時間だそうですが、3月からサマータイムに入るのでこの時点では13時間の時差になる、はずです。
……しかし、3月から「サマータイム」って……ボストンて、まだまだ寒いんじゃないのか?(汗)
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