忍者ブログ

たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

スケッチ

 燈馬君は、変わらず油絵にハマっているみたいだ。
 私が部活で遅くなるときは屋上で過ごして昇降口で待ち合わせ、が多かったのに、最近は美術室にいたり、校庭に出てあれこれ写生したりしている。
 時間を忘れて描いてるみたい。
 少しは体動かした方がいいと思うんだけどねー。
 ま、夢中になれることがあるってのは、いいことか。


「燈馬君、お待たせ!」
 帰り支度をして美術室のドアを開けると、案の定、燈馬君がカンバスに向かっていた。
 ただ1つ、いつもと違うこと……私の知らない、女の子がいた。
「あ、水原さん、お疲れ様です。今、道具片付けますね」
 笑顔を見せてくれる燈馬君。
「あ……うん」
 そうだよ、ここは美術室なんだから。
 他の人がいたって当たり前のことじゃん。
「お待たせしました。帰りましょうか」
 道具などを片付け終わった燈馬君は、戸口で振り返った。
「お先に。また明日」
 驚いた私の眼に、嬉しそうに頷く少女が映った。


 帰り道。
 燈馬君は、右手にカバンと、スケッチブックを持っている。
 ふと、最近は何を描いているのか興味が沸いた。
「ね、スケッチブック見せてよ」
「え。まだあんまり上手くないので、ちょっと……」
「えー、ダメなの?」
 ダメだと言われると見たくなるのが人情ってもんじゃない?
 一旦は諦めたフリをして、「えいっ」とスケッチブックを奪い取った。
 慌てて燈馬君が取り返そうとするけど、ふふん、私に運動神経で勝てると思ってるの?
 燈馬君が取り返すことを諦めたのを見て、スケッチブックを開く。
 どれどれ。
 最初のうちはフルーツや置物なんかの静物、それが石膏像になって、やがてグラウンドでやってる部活の様子になって。
 単体だったものに背景もついたりして、上達ぶりがよくわかる。
 もともと素質があったのか、それとも頭がいい分コツをつかむのが早いのか。
 へー、なかなか上手いじゃん。
 ペラペラとページをめくっていた手がふと止まった。
 ……さっきの子だ。
 慌てて次のページをめくる。
 ――次も。その次も。
 カンバスに向かっているところや、窓辺にもたれて外を見ているところ、これは……話しているところ?
 ……何気ない表情まで描いてるんだ。
 それ以上見たくなくて、スケッチブックを閉じる。
 燈馬君に返しながら何気なくを装って聞いてみた。
「さっきの、美術室にいた子、誰? 友達?」
 うう、顔がひきつる。
「違うクラスの人なんですが、体が弱くて休みがちなんだそうです。美術は出席日数が足りなくて課題が出ているとかで、最近、美術室でよく会うんですよ」
「……へえ」
 そんなことぐらいでアンタから挨拶するほど仲良くなったわけ?
 今までだったら、いてもいなくても関わんなかったでしょ。
 ましてや、絵を描くなんて。
「水原さん、どうしました? 顔がコワイですよ」
 ――どかっ!
 「コワイ」って何よ!
 燈馬君が涙を浮かべているけど、そんなの知らない!
「急に機嫌が悪くなりましたね……。あ、水原さん」
「何よっ!」
「アイス、食べませんか?」
 燈馬君の指差す方を見ると、公園にアイスのパラソルが出ている。
「おごりますよ」
 その邪気のない笑顔に力が抜けた。
「……食べる」
「じゃ、ちょっと待っててくださいね」
 そう言って、パラソルへ走っていく。
 表情や動きが、何だか犬っぽい。こんな燈馬君、久しぶりに見た気がする。
「はい、水原さん」
 ――あ、私の好きなバニラだ。
 燈馬君はチョコを食べてる。
「機嫌、直りましたか?」
 アイスに釣られたと思われるのもシャクだなあ。
 そう思って黙っていると、燈馬君が顔を覗き込んでくる。
「まだダメですか」
 じゃあ次は、なんてぶつぶつ言ってる。
 ――何かおっかしいの。燈馬君が、私の機嫌を直そうとしてくれてる。
「今度、モデルしてあげよっか」
「いえ、それは」
 ……何ですって?
 せっかく気を良くしてたのに、またムカっ腹が立ってきた。
 私の顔が変わったのに気づいたのか、燈馬君が慌てたように言う。
「あ、そうじゃなくて! その……人物画はまだ練習中なもので……もっと上手くなったら水原さんを描きたいなと」
 とっさに上手い嘘ついてんじゃないわよ。
 燈馬君を睨むと、うわ、首まで真っ赤っか!
 面白くて、耳をひっぱってみた。
「そうなの?」
「いずれお願いしようと思っていたのに……どうしてあなたはそう……」
 さらに赤くなって文句言ってる。
 ふふーん、そんな顔で何言ったって、怖くないもん。
 ――そっか。あの子の絵は、練習のために描いてたんだ。なーんだ。
 本当は、あの子と2人きりになるのもあの子を描くのもやめて欲しいけど、そんなこと言える仲じゃないしね。
 今回は「私を描くため」ってことで、カンベンしといてあげるわ。
 ね? 燈馬君。

「水原さん! 耳、痛いです!」


□あとがき□
 この2人、これでホントにつき合ってないんでしょうか(お前、自分で書いといて)。
 先日のブログで女性のお尻(しかも裸)のことを書いたのですが、そこから思いついたネタです(笑)。
 さすがにヌードなんて有り得ないだろうけど、燈馬君が女の子を描いてるよ、可奈ちゃんヤキモチ妬いちゃえって。
 ところで、咲坂高校には美術部ってないんですかねえ。
 あってもクラブに所属しない方が燈馬君らしい気もしますが。

拍手[0回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

フリーエリア

プロフィール

HN:
はるき
性別:
非公開
Copyright ©  -- たちばな庵 --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]