たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
スケッチ
- 2012/12/30 (Sun)
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燈馬君は、変わらず油絵にハマっているみたいだ。
私が部活で遅くなるときは屋上で過ごして昇降口で待ち合わせ、が多かったのに、最近は美術室にいたり、校庭に出てあれこれ写生したりしている。
時間を忘れて描いてるみたい。
少しは体動かした方がいいと思うんだけどねー。
ま、夢中になれることがあるってのは、いいことか。
「燈馬君、お待たせ!」
帰り支度をして美術室のドアを開けると、案の定、燈馬君がカンバスに向かっていた。
ただ1つ、いつもと違うこと……私の知らない、女の子がいた。
「あ、水原さん、お疲れ様です。今、道具片付けますね」
笑顔を見せてくれる燈馬君。
「あ……うん」
そうだよ、ここは美術室なんだから。
他の人がいたって当たり前のことじゃん。
「お待たせしました。帰りましょうか」
道具などを片付け終わった燈馬君は、戸口で振り返った。
「お先に。また明日」
驚いた私の眼に、嬉しそうに頷く少女が映った。
帰り道。
燈馬君は、右手にカバンと、スケッチブックを持っている。
ふと、最近は何を描いているのか興味が沸いた。
「ね、スケッチブック見せてよ」
「え。まだあんまり上手くないので、ちょっと……」
「えー、ダメなの?」
ダメだと言われると見たくなるのが人情ってもんじゃない?
一旦は諦めたフリをして、「えいっ」とスケッチブックを奪い取った。
慌てて燈馬君が取り返そうとするけど、ふふん、私に運動神経で勝てると思ってるの?
燈馬君が取り返すことを諦めたのを見て、スケッチブックを開く。
どれどれ。
最初のうちはフルーツや置物なんかの静物、それが石膏像になって、やがてグラウンドでやってる部活の様子になって。
単体だったものに背景もついたりして、上達ぶりがよくわかる。
もともと素質があったのか、それとも頭がいい分コツをつかむのが早いのか。
へー、なかなか上手いじゃん。
ペラペラとページをめくっていた手がふと止まった。
……さっきの子だ。
慌てて次のページをめくる。
――次も。その次も。
カンバスに向かっているところや、窓辺にもたれて外を見ているところ、これは……話しているところ?
……何気ない表情まで描いてるんだ。
それ以上見たくなくて、スケッチブックを閉じる。
燈馬君に返しながら何気なくを装って聞いてみた。
「さっきの、美術室にいた子、誰? 友達?」
うう、顔がひきつる。
「違うクラスの人なんですが、体が弱くて休みがちなんだそうです。美術は出席日数が足りなくて課題が出ているとかで、最近、美術室でよく会うんですよ」
「……へえ」
そんなことぐらいでアンタから挨拶するほど仲良くなったわけ?
今までだったら、いてもいなくても関わんなかったでしょ。
ましてや、絵を描くなんて。
「水原さん、どうしました? 顔がコワイですよ」
――どかっ!
「コワイ」って何よ!
燈馬君が涙を浮かべているけど、そんなの知らない!
「急に機嫌が悪くなりましたね……。あ、水原さん」
「何よっ!」
「アイス、食べませんか?」
燈馬君の指差す方を見ると、公園にアイスのパラソルが出ている。
「おごりますよ」
その邪気のない笑顔に力が抜けた。
「……食べる」
「じゃ、ちょっと待っててくださいね」
そう言って、パラソルへ走っていく。
表情や動きが、何だか犬っぽい。こんな燈馬君、久しぶりに見た気がする。
「はい、水原さん」
――あ、私の好きなバニラだ。
燈馬君はチョコを食べてる。
「機嫌、直りましたか?」
アイスに釣られたと思われるのもシャクだなあ。
そう思って黙っていると、燈馬君が顔を覗き込んでくる。
「まだダメですか」
じゃあ次は、なんてぶつぶつ言ってる。
――何かおっかしいの。燈馬君が、私の機嫌を直そうとしてくれてる。
「今度、モデルしてあげよっか」
「いえ、それは」
……何ですって?
せっかく気を良くしてたのに、またムカっ腹が立ってきた。
私の顔が変わったのに気づいたのか、燈馬君が慌てたように言う。
「あ、そうじゃなくて! その……人物画はまだ練習中なもので……もっと上手くなったら水原さんを描きたいなと」
とっさに上手い嘘ついてんじゃないわよ。
燈馬君を睨むと、うわ、首まで真っ赤っか!
面白くて、耳をひっぱってみた。
「そうなの?」
「いずれお願いしようと思っていたのに……どうしてあなたはそう……」
さらに赤くなって文句言ってる。
ふふーん、そんな顔で何言ったって、怖くないもん。
――そっか。あの子の絵は、練習のために描いてたんだ。なーんだ。
本当は、あの子と2人きりになるのもあの子を描くのもやめて欲しいけど、そんなこと言える仲じゃないしね。
今回は「私を描くため」ってことで、カンベンしといてあげるわ。
ね? 燈馬君。
「水原さん! 耳、痛いです!」
□あとがき□
この2人、これでホントにつき合ってないんでしょうか(お前、自分で書いといて)。
先日のブログで女性のお尻(しかも裸)のことを書いたのですが、そこから思いついたネタです(笑)。
さすがにヌードなんて有り得ないだろうけど、燈馬君が女の子を描いてるよ、可奈ちゃんヤキモチ妬いちゃえって。
ところで、咲坂高校には美術部ってないんですかねえ。
あってもクラブに所属しない方が燈馬君らしい気もしますが。
私が部活で遅くなるときは屋上で過ごして昇降口で待ち合わせ、が多かったのに、最近は美術室にいたり、校庭に出てあれこれ写生したりしている。
時間を忘れて描いてるみたい。
少しは体動かした方がいいと思うんだけどねー。
ま、夢中になれることがあるってのは、いいことか。
「燈馬君、お待たせ!」
帰り支度をして美術室のドアを開けると、案の定、燈馬君がカンバスに向かっていた。
ただ1つ、いつもと違うこと……私の知らない、女の子がいた。
「あ、水原さん、お疲れ様です。今、道具片付けますね」
笑顔を見せてくれる燈馬君。
「あ……うん」
そうだよ、ここは美術室なんだから。
他の人がいたって当たり前のことじゃん。
「お待たせしました。帰りましょうか」
道具などを片付け終わった燈馬君は、戸口で振り返った。
「お先に。また明日」
驚いた私の眼に、嬉しそうに頷く少女が映った。
帰り道。
燈馬君は、右手にカバンと、スケッチブックを持っている。
ふと、最近は何を描いているのか興味が沸いた。
「ね、スケッチブック見せてよ」
「え。まだあんまり上手くないので、ちょっと……」
「えー、ダメなの?」
ダメだと言われると見たくなるのが人情ってもんじゃない?
一旦は諦めたフリをして、「えいっ」とスケッチブックを奪い取った。
慌てて燈馬君が取り返そうとするけど、ふふん、私に運動神経で勝てると思ってるの?
燈馬君が取り返すことを諦めたのを見て、スケッチブックを開く。
どれどれ。
最初のうちはフルーツや置物なんかの静物、それが石膏像になって、やがてグラウンドでやってる部活の様子になって。
単体だったものに背景もついたりして、上達ぶりがよくわかる。
もともと素質があったのか、それとも頭がいい分コツをつかむのが早いのか。
へー、なかなか上手いじゃん。
ペラペラとページをめくっていた手がふと止まった。
……さっきの子だ。
慌てて次のページをめくる。
――次も。その次も。
カンバスに向かっているところや、窓辺にもたれて外を見ているところ、これは……話しているところ?
……何気ない表情まで描いてるんだ。
それ以上見たくなくて、スケッチブックを閉じる。
燈馬君に返しながら何気なくを装って聞いてみた。
「さっきの、美術室にいた子、誰? 友達?」
うう、顔がひきつる。
「違うクラスの人なんですが、体が弱くて休みがちなんだそうです。美術は出席日数が足りなくて課題が出ているとかで、最近、美術室でよく会うんですよ」
「……へえ」
そんなことぐらいでアンタから挨拶するほど仲良くなったわけ?
今までだったら、いてもいなくても関わんなかったでしょ。
ましてや、絵を描くなんて。
「水原さん、どうしました? 顔がコワイですよ」
――どかっ!
「コワイ」って何よ!
燈馬君が涙を浮かべているけど、そんなの知らない!
「急に機嫌が悪くなりましたね……。あ、水原さん」
「何よっ!」
「アイス、食べませんか?」
燈馬君の指差す方を見ると、公園にアイスのパラソルが出ている。
「おごりますよ」
その邪気のない笑顔に力が抜けた。
「……食べる」
「じゃ、ちょっと待っててくださいね」
そう言って、パラソルへ走っていく。
表情や動きが、何だか犬っぽい。こんな燈馬君、久しぶりに見た気がする。
「はい、水原さん」
――あ、私の好きなバニラだ。
燈馬君はチョコを食べてる。
「機嫌、直りましたか?」
アイスに釣られたと思われるのもシャクだなあ。
そう思って黙っていると、燈馬君が顔を覗き込んでくる。
「まだダメですか」
じゃあ次は、なんてぶつぶつ言ってる。
――何かおっかしいの。燈馬君が、私の機嫌を直そうとしてくれてる。
「今度、モデルしてあげよっか」
「いえ、それは」
……何ですって?
せっかく気を良くしてたのに、またムカっ腹が立ってきた。
私の顔が変わったのに気づいたのか、燈馬君が慌てたように言う。
「あ、そうじゃなくて! その……人物画はまだ練習中なもので……もっと上手くなったら水原さんを描きたいなと」
とっさに上手い嘘ついてんじゃないわよ。
燈馬君を睨むと、うわ、首まで真っ赤っか!
面白くて、耳をひっぱってみた。
「そうなの?」
「いずれお願いしようと思っていたのに……どうしてあなたはそう……」
さらに赤くなって文句言ってる。
ふふーん、そんな顔で何言ったって、怖くないもん。
――そっか。あの子の絵は、練習のために描いてたんだ。なーんだ。
本当は、あの子と2人きりになるのもあの子を描くのもやめて欲しいけど、そんなこと言える仲じゃないしね。
今回は「私を描くため」ってことで、カンベンしといてあげるわ。
ね? 燈馬君。
「水原さん! 耳、痛いです!」
□あとがき□
この2人、これでホントにつき合ってないんでしょうか(お前、自分で書いといて)。
先日のブログで女性のお尻(しかも裸)のことを書いたのですが、そこから思いついたネタです(笑)。
さすがにヌードなんて有り得ないだろうけど、燈馬君が女の子を描いてるよ、可奈ちゃんヤキモチ妬いちゃえって。
ところで、咲坂高校には美術部ってないんですかねえ。
あってもクラブに所属しない方が燈馬君らしい気もしますが。
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