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たちばな庵

二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。

カテゴリー「QED」の記事一覧

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【お題】ワガママ姫様の5つの命令

2.雨の日にデートってありえないでしょ?


「もうっ、つまんないったらつまんない!」
 本日の可奈嬢はすこぶる機嫌が悪い。
 想のマンションで、ほぼ可奈専用と化しているクッションをぼすぼすと叩きながら、想に訴えている。
「仕方がないじゃないですか」
 対する想は、パソコンから目を離すことなく答える。
「何で今日に限って雨なのよー!」
 本当なら、今日はコスモス畑に行く予定だった。
 朝は「曇ってて肌寒い」くらいの天気だったのが、可奈が想のマンションに着いた途端に土砂降りになってしまったのだ。
「来週でも間に合うかなあ。でもこんなに降ったら散っちゃうよねえ。今から止んだりしないかな。あああ」
「明後日まで雨の予報ですよ」
 ぼすっ。
 怒ったり悶絶したりする可奈を面白く眺めながら言ったら、クッションを投げつけられた。
「何冷静に言ってんのよ! 雨が降りそうってわかってるなら、何で昨日言ってくれなかったの!?」
 想はクッションを返しながら可奈の前に座る。
「水原さんなら、天気も変えられるかもしれないと思って」
 真顔で言ったら、可奈が吹き出した。
「そんなことできるわけないでしょ。どうしたの、らしくないこと言って」
「水原さんといたら、この世の中には道理がとおらないこともあるんだ、と思うようになりました」
「どういう意味なの、それ」
 可奈につられて、想も笑顔になった。
「ご機嫌が直ったところで、映画でも観に行きますか?」
「んー、もういいや。どうせ映画館も混んでるだろうし」
「じゃあ、将棋かチェスでもします? 教えますよ」
「燈馬君とやって勝てるわけないじゃん!」
「じゃあ……」
「いいよ。今日は帰る」
 立ち上がりかけた可奈の手を、思わずつかんだ。
 可奈が目を丸くして動きを止めたが、それよりも想の方が驚いていた。
「あ、その……もう少しいませんか? 雨もまだ降ってますし」
 一瞬の沈黙の後、なぜか可奈がにやりと笑った。
「……ふーん。雨が降ってるから?」
「雨が降ってるから、です」
「ま、そういうことにしといてもいいけど」
 ……どういう意味だろう。
 答えに窮していると、可奈が満面の笑みで言った。
「さて、何して遊ぶ?」


□一言ツッコミ
……なんか……「雨の日のデートもいいね」になっちゃった気が……。

 お題配布元:age様

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【お題】ワガママ姫様の5つの命令

1.今日は限定スイーツの気分


「可奈ぁ。この間行った駅前の喫茶店で、限定のスイーツ出てるんだって! 行こっ!」
 ホームルーム終了後、梅宮と香坂が可奈に声をかけた。
「あー、ごめん。今日は無理」
「あ、もしかして、もう燈馬君と約束してるから、とか?」
「違うよっ! 今度の剣道部の試合の件で、対戦校が来んの! 遅くなりそうだからさ。明日じゃだめ?」
「限定スイーツは今日だけだよ。お店の開店記念だって」
「えーっ! そんなのないよ!」
「そんなの、私らに言われても……でも、ま、しょうがないから、2人で行こっか。梅宮」
「そうだね。香坂」
「裏切り者―!」
 半泣きの可奈を置いて、梅宮と香坂は教室を出て行った。


 さすがに30分ほど並んだが、梅宮と香坂はお目当ての限定スイーツを注文することができた。
「『裏切り者ー!』だって」
「しょっちゅう海外行ったり、どっちが裏切り者だっての」
「「ねー」」
「可奈にあって、私らにないものって、何だと思う?」
 梅宮がケーキを食べながら言えば。
「うーん……腕っ節、人間離れした運動能力、図太い神経、あ、料理は確かに可奈のが上手い」
 紅茶を飲みながら香坂が返す。
「「それでも私らのが女の子らしいよねえ~」」
 なのに、なんで可奈にだけ彼氏がいるのか、と呟く2人の視線の先には想がいた。
 限定スイーツをテイクアウトするため、梅宮と香坂に同行したのだ。
 目的はもちろん、可奈に食べさせるため、である。
「ここまでしてもらって、彼氏じゃないって言い切るところが逆にすごいわ」
「燈馬君、この後また学校に戻るんだよね。尽くすねえ」
 そんなことを言い合っている2人に、想が近づいてきた。
「ありがとうございます。買えました」
 そう言って、ケーキ箱を持ち上げる。
「5種類あったでしょ? 何にしたの?」
「どれがいいかわからなかったので、全種類を1つずつ買いました。水原さんなら、5つくらい2日で食べるでしょうし」
「あ、そ……」
「じゃあ、また明日」
「ばいばい。可奈によろしく」
 店を出る想を、梅宮と香坂は手を振って見送った。

「可奈の分だけ買ったんだ……。しかも、明日の放課後も一緒に過ごすってことよね……」
「私、もう何も言う気起きなかったわ……」
「私も……」
 せっかくの限定スイーツを前にして、ため息しか出てこない2人であった。

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男心と秋の空

 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、想はノートパソコンから顔を上げた。
「水原さん、そろそろ教室に戻りましょうか……」
 可奈にかけた想の声はしかし、どんどん小さくなっていった。
 肩に重みがかかったからだ。
 感じるのは、規則正しい暖かな寝息。
「水原さん、風邪ひきますよ」
 可奈の肩を揺するが、寝入っているようで起きる気配はない。
 昼間は暖かな陽気が続くといっても、10月に入り、空気は着実に温度を下げている。
 屋上で寝てしまっては、さすがの可奈も風邪をひいてしまうだろう。
 どうしようか、と思案しているうちに、可奈の頭はずりずりと下がっていく。
 なすすべなく狼狽する想をよそに、可奈が頭を落ち着けたのは、あぐらをかいている想の腿の上、だった。
 コンクリートの上に寝て痛くないのかな、などと考えていると、ふわりと風が吹いた。
 想は慌てて上着を脱いだ。
 可奈の体を心配したのももちろんだが、それよりも、スカートが揺れたことが大きい。
 ここは屋上よりもう一段上の給水塔。
 もともと人の往来はほとんどないし、時間が時間なので誰もいない。
 想を含め、スカートが多少動いたからといってその中が見える人間がいるわけではないのだが。
 上着を可奈にかけ、想は少し乱暴に肩を揺すった。
 授業開始のチャイムはとっくに鳴り終わっている。
「水原さん、午後の授業始まりましたよ! 起きてくださいっ」
「んん……?」
「起きましたか?」
 ――ばしゅっ。
 想がほっとしたのも束の間、繰り出されたのは可奈の拳だった。
 すんでのところで避けたそれがぱたりと落ちていくのを、想は冷や汗を浮かべながら見つめる。
「…………」
 ――やはり、我が身が可愛い。
 想はため息をついて、給水塔に背を預けた。
 可奈が起きたのは、それからたっぷり2時間後だった。


 翌日。
 想だけが風邪をひいたのはお約束、である。

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花火

 カラン、コロン。

 涼しげな音が、闇の路地に響く。
「キレイだったねー、花火」
 そう言う可奈の手では、出店で獲得した水風船がぱしゃぱしゃと音を立てている。
「そうですね」
 今日は可奈が浴衣姿なので歩調がいつもよりゆっくりだ。

 カラン、コロン。

「燈馬君も浴衣着てこれば良かったのに」
「自分じゃ着られませんから」
「じゃあ、甚平とか。明日、見に行こっか。あと1回くらい、どこかで花火かお祭やるでしょ。もう夏物セールも終盤だもんね~。いいのあったら私ももう1枚買っちゃおうかなっ」
「そうですね」

 カラン、コロン。

「何よぉ。行きたくないの?」
「……水原さん」
「んー?」
「……日本では、花火に慰霊や鎮魂の意味もあるそうですね」
「へー、そうなんだ。初めて聞いた」

 想が、無言で足を止めた。

「燈馬君」
「な、何ひゅるんでふか」
「まーた、自分が関わらなければ、なんて変なこと考えてるんでしょ」
「……」
「燈馬君が関わったからこそ、救われた命だとか、解決した事件がたくさんあるじゃない? 私だって、燈馬君に助けてもらったことあるしさ」

 可奈は想の頬から手を離し、今度は想の手を取って歩き始めた。
 再び、下駄の音が辺りに響く。

「確かに嫌な事件や悲しい事件にもたくさん遭ったけど、それは無駄なことじゃないと思うよ。ましてや燈馬君のせいだなんて、絶対ない」

 カラン、コロン。

「辛いなら、花火にはもう誘わないからさ。でも、燈馬君にはもっともっとたくさんの人が救えると思う。見て見ぬふりだけはしないで欲しいな」

 可奈に引かれるだけだった想の手に力がこもった。

「どうかした?」
「いえ……来週、どこで花火があるか調べておきます」
「無理しなくていいんだよ?」

 心配になって覗き込んだ想の顔は、笑っていた。

「無理なんかしていません。それよりも明日、水原さんの買い物は、僕の甚平を選んだ後にしてくださいね」
「えー」
「じゃないと、また水原さんの買い物だけで終わっちゃうじゃないですか!」
「買い物と話が長いのは、女の子の義務なんだよ」
「そんな話、聞いたことありません」
「ケチ」

 お互い顔を見合わせて笑い合って。
 前を向いて歩こう。
 ――手は、つないだまま――。


□あとがき□
 今回は、少ーししっとり、お姉さんな可奈ちゃん。
 過去を振り返ることも大切ですが、過去に捕らわれることなく。うん。

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ナツと彼女と海と

 Pipipipipi……。
 想の携帯が鳴った。
「出ないの? あ、私、部屋から出たほうがいい?」
 可奈が、うつ伏せに寝そべっている想に携帯を差し出す。
 想は可奈から携帯を受け取り、送信者を見るとため息をついて着信ボタンを押した。


「――もしもし?」
『燈馬っ! 何でメールの返信寄こさないんだよ! 大至急ってあれだけ書いたろ!?』
 想は相手の声の大きさに、耳から電話を離した。
「メール? ごめん。昨日から伊豆に来ていて、家にいないんだ」
『IZU?』
「日本にある海水浴場だよ。温泉もあるけど。箱根はわかる?」
『海水浴? 燈馬が!?』
 送信者はMITに通っていたときの友人だが、いつもリアクションがオーバーだ。
 だからいつもはいちいち気にしないが、あまりの驚かれように想は苦笑する。
「そんなに意外かな」
『意外どころか、有り得ねーだろ! ……あ、もしかして、ロキが言ってたことはほんとか?』
「……ロキが、何だって?」
『燈馬に、えらい可愛い彼女がいるって! お前、いつの間に!? お前に彼女がいて俺がフリーってどういうことだよ!』
「知らないよ。それに、別に2人で来ているわけじゃないよ。クラスメイト何人かで来てるんだ」
『クラスメイトと旅行! お前が!?』
「用件は? 急ぎなんだろ?」
『ああ、そうそう、それそれ!』
 このまま脱線が進めば収拾がつかない。
 想は強引に話を戻した。
『取り寄せて欲しい論文があったんだよ。機関を通すと時間かかるから、お前に直接頼みたかったんだけど』
「相変わらずギリギリで動いてるんだ」
『さすが、わかってるね。帰宅はいつだ?』
「2日後……いや、もう少し延びると思う。いつ帰るか、まだわからない。他に手配できる人を紹介するから、そっちから連絡させるよ」
『悪いな』
 そう言って想は従兄弟の森羅に連絡を取り、論文の手配を頼んだ。


 可奈は通話を終えた想から携帯電話を受け取り、カバンに戻しながら尋ねた。
「延泊するの? そんなにここ、気に入った?」
「何言ってんですか!」
 想の大きな声に、可奈は首をすくめる。
「水原さんや他のみんなはあと2日楽しめるかもしれないけど、僕はここでずっと寝てなきゃいけないんですよ!? まだほとんど遊んでないのに! 誰のせいだと思ってんですか!」
「だってー、燈馬君、寝てるからさ、つい、イタズラ心で……」
「やっていいことと悪いことがあります!」
「ごめんって。こんなことになると思わなかったんだもん~。だからほら、こうやってタオル交換してるでしょ?」
「……日焼けというのは熱傷深度Ⅰ~Ⅱの状態、つまりヤケドと同じことなんですよ。程度は低くても範囲が広いから、下手をすると入院するほど危険な状態に陥ることもあるんです」
 ――想が寝そべって、可奈が甲斐甲斐しく世話を焼いているのには理由があった。
 砂浜のパラソルの下で本を読んでいた想がうたた寝したのをいいことに、可奈がパラソルを動かしてしまったのだ。
 可奈がそれを忘れて沖で遊んでいたため、想が起きた頃には数時間が過ぎていて、想の全身は真っ赤になって熱を持っていた。
 動くのも痛いくらいで、シャワーを浴びても染みる。
 それで可奈が、氷水で冷やしたタオルで想の体の熱をとっているのだ。
 因みに他のクラスメイトは、襖を隔てた隣の部屋でトランプをしている。
「え、まさか、燈馬君も明日から入院?」
「それはまだわかりません。吐き気や発熱があったら病院に行った方がいいでしょうけど……しばらく様子を見ます」
「じゃあ何で、帰る日がわからないって」
「そんなの決まってるじゃないですか。治るまでここにいて、伊豆の海を満喫するまで滞在するからです。完治する日がわからなければいつ満足するかもわかりませんから」
「でも、みんな帰っちゃうよ?」
「他の皆さんは予定通り帰京するでしょう。でも、水原さんは残ってくれますよね? そして当然、滞在にかかる費用は水原さん持ちです」
 可奈がぎょっとする。
「何で!」
「どの口がそんなこと言うんですか!」
「100歩譲って残るのは仕方ないとしても、そんなお金持ってないよ!」
「……100歩譲って、ですか」
 想は声のトーンを落とした。
「わかりました。水原さんも予定通り帰ってください」
「と、燈馬君?」
「タオルの交換も、もういいです。皆さんとトランプを楽しんできてください」
「だってしょうがないじゃん! そんなにお小遣いないし、バイトする時間もなかったし」
「お金の問題じゃないです。多少なりとも罪悪感があれば『100歩譲って』なんて言葉、出ませんよ」
「う……。ご、ごめんなさい……」
「何ですか? 聞こえませんよ」
「ごめんなさい」
 正座をしてうな垂れる可奈に、想はようやく笑顔を向ける。
「では水原さん。シャーベットが食べたいので買ってきてください。財布はカバンの外ポケットに入ってます」
「わ、わかった」
 可奈は想の財布を手にし、部屋を出て行った。


 さて、そんな2人のやりとりをこっそり見ている者がいた。
 正確には「者たち」――そう、同行したクラスメイトだ。
 想に気づかれないようにそっと襖を閉めながら、誰からともなく口を開く。
「……すげー。アイツ、水原にパシリさせたぞ」
「あの可奈が、あんな顔で謝るなんて」
「見た? 燈馬君のあの満足そうな顔!」
「確信犯だな、あれは」
 全員一致で頷く。
「つーかさー、ここに2人残るって話でまとまったわけだけど、最初っからほとんど別行動だったじゃん!」
「私ら、明らかに2人の眼中になかった感じよねー」
「でも、ま、それもいつものことじゃねえ?」
「それもそっか」
「ねね、私らが帰った後、あの2人、一緒の部屋に泊まるのかなあ?」
「別じゃねえの?」
「案外、一緒かもよー」
「俺、同室に100円」
「いやいや、まだ別室だね。300円」
「――結果は誰が聞くの?」
「……私、やだ」
「俺だって嫌だよ、まだ死にたくねえよ」
「……じゃあ、この賭けは、なかったってことで」
 そして再び、全員一致で頷いたのだった。


□あとがき□
 「彼女」発言を否定しない燈馬君(笑)。
 燈馬君、当初は「孤独な天才少年」てイメージでしたが、実はけっこう友達多いですよね。
 
 それはさておき、2人が同室になったのか否かは皆様のご想像にお任せします~。

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