たちばな庵
二次創作メインのブログです。 男女CPオンリー。 ご注意ください。
カテゴリー「キス早」の記事一覧
- 2024.11.22
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- 2013.01.02
5巻からクリスマス話
- 2012.12.31
10巻 文化祭後
- 2012.12.30
手をつなごう
- 2012.12.30
無意識の告白
- 2012.12.30
9巻 龍せんせいの反省
5巻からクリスマス話
- 2013/01/02 (Wed)
- キス早 |
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ずっと書きたかったネタです。
クリスマスはとうに過ぎておりますが……ご容赦くださいm(_ _)m
鉄兵くんが寝た頃を見計らって、そっと襖を開ける。
よく寝ているようだけれど、念のため声を潜めて手招きをした。
「文乃さん、文乃さん」
文乃さんは顔に「?」を浮かべながら、自分の部屋に招き入れた。
文乃さんを座らせて自分も向かいに座って――
「どうしてもダメですか? サンタビキニ」
――サンタビキニを出してみた。
「着ねーよ!」
「そうですか……」
かぶせ気味の返事はやはり「No」で――当たり前か。
まあ、本題は別のところにあるんだけど。
「わざわざ呼び出してそんな話? だったらあたしもう寝る……」
「待って待って。さっきのは冗談。――鉄兵くんのクリスマスプレゼントを相談したくて」
「……え?」
立ち上がりかけた文乃さんを慌てて制して、再び座ってもらう。
「文乃さんもアルバイトしたお金でプレゼント用意するでしょう? かぶっちゃわないようにしないとね。
やっぱりリーゼントくんのおもちゃかな。けど、本が好きだから絵本も喜んでくれそうだよね。文乃さん、鉄兵くんから何か聞いてる? ――文乃さん?」
文乃さんはうつむいて、肩を震わせている。
「――龍せんせいが言ってた。鉄兵、保育園で『サンタさんへのお願い』に『3人でずっと暮らせるように』って書いたんだって。何か欲しい物はないか聞いたら、まーくんとブンちゃんって答えたんだって。
……クリスマスって言うより、七夕みたいだよね!」
――上げた文乃さんの顔は、泣き笑いになっていた。
「文乃さん」
「去年は何も買ってあげられなくて……当然サンタさんも……鉄兵、あんなに良い子なのに……っ」
文乃さんの目に、涙が溢れる。
――たまらず、ぎゅっと抱きしめた。
「文乃さん、たくさんプレゼントを買おう。
サンタさんから、去年と今年の分で2つ。25日の交換用にも、僕からと文乃さんからで2つ。
ね?」
「せんせ……ありがと……」
文乃さんも僕を抱きしめてくれる。
――よみがえる、子どもの頃の記憶。
街中や友達の家のように飾りつけられることのない我が家、そして――いくら待っても来ないサンタクロース。
鉄兵くんにそんな思いはさせたくない。それは、文乃さんも同じだろう。
けれど、昨年の状況はクリスマスどころではなくて――それでも文乃さんは自分を責めてしまう。
「今年のクリスマスは盛大にしましょう」
――去年のクリスマスを補って余りあるぐらいに。
「――うん。でも、やりすぎはダメだよ。もうツリーの飾りは十分だし、ケーキも1個で良いからね」
「はーい。文乃さんはしっかり者の奥さまですね☆」
「な……っ。それから、サンタビキニは着ないからね!」
「うーん、仕方ない。それじゃ、別の衣装を考えないと」
「ほっ、ほどほどにしてよ」
「ほどほどかー、うーん」
「そこ、悩むとこなの!?」
クリスマスはとうに過ぎておりますが……ご容赦くださいm(_ _)m
鉄兵くんが寝た頃を見計らって、そっと襖を開ける。
よく寝ているようだけれど、念のため声を潜めて手招きをした。
「文乃さん、文乃さん」
文乃さんは顔に「?」を浮かべながら、自分の部屋に招き入れた。
文乃さんを座らせて自分も向かいに座って――
「どうしてもダメですか? サンタビキニ」
――サンタビキニを出してみた。
「着ねーよ!」
「そうですか……」
かぶせ気味の返事はやはり「No」で――当たり前か。
まあ、本題は別のところにあるんだけど。
「わざわざ呼び出してそんな話? だったらあたしもう寝る……」
「待って待って。さっきのは冗談。――鉄兵くんのクリスマスプレゼントを相談したくて」
「……え?」
立ち上がりかけた文乃さんを慌てて制して、再び座ってもらう。
「文乃さんもアルバイトしたお金でプレゼント用意するでしょう? かぶっちゃわないようにしないとね。
やっぱりリーゼントくんのおもちゃかな。けど、本が好きだから絵本も喜んでくれそうだよね。文乃さん、鉄兵くんから何か聞いてる? ――文乃さん?」
文乃さんはうつむいて、肩を震わせている。
「――龍せんせいが言ってた。鉄兵、保育園で『サンタさんへのお願い』に『3人でずっと暮らせるように』って書いたんだって。何か欲しい物はないか聞いたら、まーくんとブンちゃんって答えたんだって。
……クリスマスって言うより、七夕みたいだよね!」
――上げた文乃さんの顔は、泣き笑いになっていた。
「文乃さん」
「去年は何も買ってあげられなくて……当然サンタさんも……鉄兵、あんなに良い子なのに……っ」
文乃さんの目に、涙が溢れる。
――たまらず、ぎゅっと抱きしめた。
「文乃さん、たくさんプレゼントを買おう。
サンタさんから、去年と今年の分で2つ。25日の交換用にも、僕からと文乃さんからで2つ。
ね?」
「せんせ……ありがと……」
文乃さんも僕を抱きしめてくれる。
――よみがえる、子どもの頃の記憶。
街中や友達の家のように飾りつけられることのない我が家、そして――いくら待っても来ないサンタクロース。
鉄兵くんにそんな思いはさせたくない。それは、文乃さんも同じだろう。
けれど、昨年の状況はクリスマスどころではなくて――それでも文乃さんは自分を責めてしまう。
「今年のクリスマスは盛大にしましょう」
――去年のクリスマスを補って余りあるぐらいに。
「――うん。でも、やりすぎはダメだよ。もうツリーの飾りは十分だし、ケーキも1個で良いからね」
「はーい。文乃さんはしっかり者の奥さまですね☆」
「な……っ。それから、サンタビキニは着ないからね!」
「うーん、仕方ない。それじゃ、別の衣装を考えないと」
「ほっ、ほどほどにしてよ」
「ほどほどかー、うーん」
「そこ、悩むとこなの!?」
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10巻 文化祭後
- 2012/12/31 (Mon)
- キス早 |
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「梶さん、文化祭のときはありがとう! また巻き込んじゃって、ごめんね? これ、良かったら食べて」
昼休み、文乃は岡からまたクッキーを貰った。
「えっ、気にしないでいいのに。帰ってせん……鉄兵と食べるよ。ありがとね」
「ねーねー、梶さん」
岡の後ろから、小夜が顔を出した。
「文化祭のときさ、屋上で他校のコに告られてなかった?」
「ええええぇっ!?」
不意打ちに思わずリアクションを取ってしまって、ガタン! と椅子が鳴った。
「ちょい茶髪で学ラン着てたコと一緒にいたの、梶さんじゃない?」
見られてた……! あれ、でも、先生とは気づかれてない……?
動揺の中、文乃はどう反応したら良いのか考える……が、結局はあたふたしているだけである。
「きっと違うって。あの告白、OKもらってたし。梶さんは尾白先生が……」
「花井ちゃん、ストップ!」
文乃は慌てて花井の口に手を当てた。
こんな人の多い教室でその先を言われては困る!
「えー、でも、遠目にもあれは梶さんに見えたけどなあ」
納得いかない風の小夜に、岡が口を挟んだ。
「きっと違うよ。不良に絡まれたときも、先生のこと呼んでたし」
「そっか。――黒沢! ちらちらこっち見てないで、お前もちっとは積極的になれ!」
「う、うるせーっ!」
岡も文乃じゃないと否定してくれて、話の流れが変わったことにほっとする。
――でも、そうか……。あれ、普通に高校生の告白シーンに見えたんだ……。
何だか嬉しくなる――と同時に、そのときのことを思い出して顔が熱くなった。
――縮めることができない年齢差を気にしているのは先生も一緒。
今回は先生から近づいてくれたから、今度は私から近づいていかなくちゃ。
先生に相応しい妻になるために――。
□あとがき□
「告白している」とわかるくらいならばっちり顔もわかるだろうし、「梶」「一馬くん」も聞こえるはずだろう、というツッコミはなしでお願いします(苦笑)。
ブンちゃんは学ランウサギ男に拉致られたわけですが、岡ちゃんは烈に釘付けになってて気づかなかった、ということでお願いします(苦笑2)。
熊猫は学ランじゃなかったよね? とざっとコミックスを読み返したのですが、みんなずっとセーター着てる……。
この学校、ジャケットないのか?(んなわけないだろう、ともう1回見たら、読み切りの美月が着てた)
昼休み、文乃は岡からまたクッキーを貰った。
「えっ、気にしないでいいのに。帰ってせん……鉄兵と食べるよ。ありがとね」
「ねーねー、梶さん」
岡の後ろから、小夜が顔を出した。
「文化祭のときさ、屋上で他校のコに告られてなかった?」
「ええええぇっ!?」
不意打ちに思わずリアクションを取ってしまって、ガタン! と椅子が鳴った。
「ちょい茶髪で学ラン着てたコと一緒にいたの、梶さんじゃない?」
見られてた……! あれ、でも、先生とは気づかれてない……?
動揺の中、文乃はどう反応したら良いのか考える……が、結局はあたふたしているだけである。
「きっと違うって。あの告白、OKもらってたし。梶さんは尾白先生が……」
「花井ちゃん、ストップ!」
文乃は慌てて花井の口に手を当てた。
こんな人の多い教室でその先を言われては困る!
「えー、でも、遠目にもあれは梶さんに見えたけどなあ」
納得いかない風の小夜に、岡が口を挟んだ。
「きっと違うよ。不良に絡まれたときも、先生のこと呼んでたし」
「そっか。――黒沢! ちらちらこっち見てないで、お前もちっとは積極的になれ!」
「う、うるせーっ!」
岡も文乃じゃないと否定してくれて、話の流れが変わったことにほっとする。
――でも、そうか……。あれ、普通に高校生の告白シーンに見えたんだ……。
何だか嬉しくなる――と同時に、そのときのことを思い出して顔が熱くなった。
――縮めることができない年齢差を気にしているのは先生も一緒。
今回は先生から近づいてくれたから、今度は私から近づいていかなくちゃ。
先生に相応しい妻になるために――。
□あとがき□
「告白している」とわかるくらいならばっちり顔もわかるだろうし、「梶」「一馬くん」も聞こえるはずだろう、というツッコミはなしでお願いします(苦笑)。
ブンちゃんは学ランウサギ男に拉致られたわけですが、岡ちゃんは烈に釘付けになってて気づかなかった、ということでお願いします(苦笑2)。
熊猫は学ランじゃなかったよね? とざっとコミックスを読み返したのですが、みんなずっとセーター着てる……。
この学校、ジャケットないのか?(んなわけないだろう、ともう1回見たら、読み切りの美月が着てた)
手をつなごう
- 2012/12/30 (Sun)
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放課後。
廊下を歩いていると、珍しく文乃さんが教室に残っているのが見えた。
窓際に立って、外を眺めている。
「何見てんです?」
「っわあぁっ! びっくりした!」
ひょっこり近づいた僕に、文乃さんはびくっと振り返った。
「鉄兵くんのお迎え、いいんですか?」
「良くない! 行かなきゃ! わわ、鉄兵ごめん、すぐに行くからね!」
時計を指差すと、文乃さんはよほど慌てたのだろう、ここにはいない鉄兵くんに謝りながらカバンをつかんでバタバタと出て行った。
文乃さんを見送って、僕は再び外を見た。
部活に励む野球部やサッカー部、校外ランニングから帰ってきたらしいバレー部、そして正門から出て行く生徒たち――その中にはダントンさんと……翔馬。
――文乃さん、物憂げな目で、誰を見ていたの?
「参考書?」
「うん、慌ててて、教室に忘れてきたみたいで」
夕食時、文乃さんが参考書を貸して欲しいと僕に申し出た。
普段は問題集から目を離さないのに。
――誰を見ていて参考書を忘れたの?
僕のどこかで、カチリとスイッチの入る音がした。
「文乃さん、今日、教室の窓から何を見てたの?」
「ちょっ、ちょっと、先生! ご飯中っ」
僕は箸を置いて、後ろから文乃さんを抱きすくめた。
「黒沢くんか、翔馬? それとも、また違う誰か?」
「何それ。違うし!」
「じゃあ誰?」
「誰とかじゃなくて……」
「ん?」
追及の手を緩めない僕に観念したのか、文乃さんは真っ赤になってぼそぼそ話し始めた。
「手、つなげていいなって……」
「手?」
「手つないで帰ってる人たちがいたでしょ? 羨ましいなって」
「……」
「……おかしいよね! 毎日こうやってイチャイチャしてるのに、今さら手をつなぎたいなんて」
――ああもう!
僕は堪らなくなって、文乃さんを抱き締めた。
夕食後、文乃さんと鉄兵くんを散歩に誘い出した。
まだあんまり寒くないし、月も綺麗だ。
目に入るものを英単語で言い合いながら、公園へと向かう。
滑り台へ走る鉄兵くんに注意を促して、隣を歩く文乃さんの手をそっと握った。
文乃さんが僕を見る。
「この時間なら、誰も見てないでしょ」
片目をつぶって見せると、文乃さんは嬉しそうに「うん」と笑った。
「卒業したら、1日中手をつないでデートしようね」
「うん」
「楽しみにしてる」
それまで忘れないで。僕の手の温度を。
僕も忘れない。君の手のぬくもりを――。
廊下を歩いていると、珍しく文乃さんが教室に残っているのが見えた。
窓際に立って、外を眺めている。
「何見てんです?」
「っわあぁっ! びっくりした!」
ひょっこり近づいた僕に、文乃さんはびくっと振り返った。
「鉄兵くんのお迎え、いいんですか?」
「良くない! 行かなきゃ! わわ、鉄兵ごめん、すぐに行くからね!」
時計を指差すと、文乃さんはよほど慌てたのだろう、ここにはいない鉄兵くんに謝りながらカバンをつかんでバタバタと出て行った。
文乃さんを見送って、僕は再び外を見た。
部活に励む野球部やサッカー部、校外ランニングから帰ってきたらしいバレー部、そして正門から出て行く生徒たち――その中にはダントンさんと……翔馬。
――文乃さん、物憂げな目で、誰を見ていたの?
「参考書?」
「うん、慌ててて、教室に忘れてきたみたいで」
夕食時、文乃さんが参考書を貸して欲しいと僕に申し出た。
普段は問題集から目を離さないのに。
――誰を見ていて参考書を忘れたの?
僕のどこかで、カチリとスイッチの入る音がした。
「文乃さん、今日、教室の窓から何を見てたの?」
「ちょっ、ちょっと、先生! ご飯中っ」
僕は箸を置いて、後ろから文乃さんを抱きすくめた。
「黒沢くんか、翔馬? それとも、また違う誰か?」
「何それ。違うし!」
「じゃあ誰?」
「誰とかじゃなくて……」
「ん?」
追及の手を緩めない僕に観念したのか、文乃さんは真っ赤になってぼそぼそ話し始めた。
「手、つなげていいなって……」
「手?」
「手つないで帰ってる人たちがいたでしょ? 羨ましいなって」
「……」
「……おかしいよね! 毎日こうやってイチャイチャしてるのに、今さら手をつなぎたいなんて」
――ああもう!
僕は堪らなくなって、文乃さんを抱き締めた。
夕食後、文乃さんと鉄兵くんを散歩に誘い出した。
まだあんまり寒くないし、月も綺麗だ。
目に入るものを英単語で言い合いながら、公園へと向かう。
滑り台へ走る鉄兵くんに注意を促して、隣を歩く文乃さんの手をそっと握った。
文乃さんが僕を見る。
「この時間なら、誰も見てないでしょ」
片目をつぶって見せると、文乃さんは嬉しそうに「うん」と笑った。
「卒業したら、1日中手をつないでデートしようね」
「うん」
「楽しみにしてる」
それまで忘れないで。僕の手の温度を。
僕も忘れない。君の手のぬくもりを――。
無意識の告白
- 2012/12/30 (Sun)
- キス早 |
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「あれ、文乃さん、まだ勉強してるの?」
風呂あがり、灯りのもれる和室の襖をそろっと開けると、文乃さんがまだ机に向かっていた。
「うん。キリがついたら、寝ようと思ってたとこ」
なら良いけど、と言って背後から参考書を覗き込む。
「わからないところはない? って、数学じゃないですか……」
参考書とノートに並ぶ数式。
苦手分野だから手助けできないじゃないか。
「そりゃ、英語だけ勉強するわけにいかないじゃん。英語は、明日、図書館でやる予定」
「え?」
――明日、図書館?
「あれ、明日、図書館で勉強するって言ってなかったっけ?」
「――聞いてませんよ」
「ひゃっ」
文乃さんをぎゅっと抱きしめると、可愛らしい声が上がる。
「ちょ……先生!?」
明日は僕も1日家にいられるから、文乃さんと鉄兵くんと3人で「家族団欒」ができると思ってたのになー。
最近、文乃さんは図書館に行くことが増えた。
勉強を頑張ってくれてるのは嬉しいけど、気がかりなことも、ある。
「それは、翔馬と?」
「あ、うん。メグちゃんも一緒だけど。鉄兵も連れてくよ。……や……っ」
どうしようもない焦燥感に襲われて、文乃さんのむき出しになった首筋に唇を這わせる。
僕の腕から逃れようとするけれど、もちろんそんなことはさせない。
「先生? どうしたの?」
文乃さんの声を無視して、耳元で囁いた。
「翔馬の方が良くなっちゃった……?」
「………………は? なっ、何言ってんの!?」
文乃さんはばっとこちらを振り返ると、少し辛そうな顔になった。
あれ、と思っている間に両手が伸びてきて、ふわりと僕を抱きしめる。
「あたしが好きなのは、先生だけだよ」
――!
「うん……ありがとう。ごめん、ちょっと弱気になった」
「何で先生が弱気になるのよ。あたしの方がこんなに好きなのに。だいたい、翔馬くんの方もあたしなんか眼中にないって。――何?」
文乃さんはまだ翔馬の気持ちに気づいてないのか……。
翔馬はライバルだけれど、何か少し可哀想かも。
けど。
敵に塩を送ることなんかもちろんしない。
文乃さんに関して、兄弟も何もあるもんか!
「今の、もう1回言ってください?」
「え? 翔馬くんの方もあたしのことは眼中にない?」
「違ーう。その前」
「その前って――あっ」
「はい、もう1回♪」
「い、言わないよっ」
「えー、残念だなぁ」
でも、そうだね。
「僕の方が、ずーっと文乃さんのこと好きですからねっ」
「ばっ、ばかっ」
風呂あがり、灯りのもれる和室の襖をそろっと開けると、文乃さんがまだ机に向かっていた。
「うん。キリがついたら、寝ようと思ってたとこ」
なら良いけど、と言って背後から参考書を覗き込む。
「わからないところはない? って、数学じゃないですか……」
参考書とノートに並ぶ数式。
苦手分野だから手助けできないじゃないか。
「そりゃ、英語だけ勉強するわけにいかないじゃん。英語は、明日、図書館でやる予定」
「え?」
――明日、図書館?
「あれ、明日、図書館で勉強するって言ってなかったっけ?」
「――聞いてませんよ」
「ひゃっ」
文乃さんをぎゅっと抱きしめると、可愛らしい声が上がる。
「ちょ……先生!?」
明日は僕も1日家にいられるから、文乃さんと鉄兵くんと3人で「家族団欒」ができると思ってたのになー。
最近、文乃さんは図書館に行くことが増えた。
勉強を頑張ってくれてるのは嬉しいけど、気がかりなことも、ある。
「それは、翔馬と?」
「あ、うん。メグちゃんも一緒だけど。鉄兵も連れてくよ。……や……っ」
どうしようもない焦燥感に襲われて、文乃さんのむき出しになった首筋に唇を這わせる。
僕の腕から逃れようとするけれど、もちろんそんなことはさせない。
「先生? どうしたの?」
文乃さんの声を無視して、耳元で囁いた。
「翔馬の方が良くなっちゃった……?」
「………………は? なっ、何言ってんの!?」
文乃さんはばっとこちらを振り返ると、少し辛そうな顔になった。
あれ、と思っている間に両手が伸びてきて、ふわりと僕を抱きしめる。
「あたしが好きなのは、先生だけだよ」
――!
「うん……ありがとう。ごめん、ちょっと弱気になった」
「何で先生が弱気になるのよ。あたしの方がこんなに好きなのに。だいたい、翔馬くんの方もあたしなんか眼中にないって。――何?」
文乃さんはまだ翔馬の気持ちに気づいてないのか……。
翔馬はライバルだけれど、何か少し可哀想かも。
けど。
敵に塩を送ることなんかもちろんしない。
文乃さんに関して、兄弟も何もあるもんか!
「今の、もう1回言ってください?」
「え? 翔馬くんの方もあたしのことは眼中にない?」
「違ーう。その前」
「その前って――あっ」
「はい、もう1回♪」
「い、言わないよっ」
「えー、残念だなぁ」
でも、そうだね。
「僕の方が、ずーっと文乃さんのこと好きですからねっ」
「ばっ、ばかっ」
9巻 龍せんせいの反省
- 2012/12/30 (Sun)
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ブンちゃんたちの勉強合宿に乱入した帰り道。
無事に見つかった鉄兵を車に乗せて、オレは珍しく落ち込みモードに入っていた。
不注意で鉄兵を危険な目に合わせたのは、これで2度目……いや、3度目?
いくらプライベートとはいえ、保育士なのにイカンだろう……。
鉄兵に何事もなくて良かった。
それにしても。
ブンちゃんは出来たコだなー。
今日のことも、目を離したオレが悪いのに、第一声が「迷惑かけてごめんなさい!」だもんな。
怒るまーくんからもかばってくれて。
自分のことを棚上げして保育園にクレームつけてくるモンスターなんちゃらまがいのおかーさま方を相手にする身としては、新鮮つーか心にしみるっつーか。
信号が赤になったので、ブレーキをかけてハンドルに凭れた。
「……あれはまーくんじゃなくてもホレるよなー」
…………。
「龍せんせい、しんごうかわったよー」
「おっと」
ふと我に返って、アクセルを踏む。
…………。
――あれ。今の、言葉に出て……た?
嫌~な汗が背中を流れた、気がした。
「て……鉄兵? オレ、今、何か言った?」
「なにが?」
――ほっ。心の中の呟きだけだったみたいだ。
いや、本当にブンちゃんにホレたわけじゃないけど、冗談でもそんなことを言おうもんなら……。
………………下手したら沈められちゃうかもしんない………………。
考えるだけでオソロシイ;
「龍せんせい」
「どした?」
「ホレるって、なにー?」
――ぶっ!
「鉄兵」
「なあに?」
「何でも好きなモン買ってやるから、今の言葉は忘れろ。なっ?
何が欲しい? オモチャ屋に寄るか? それともケーキか? 両方でも良いぞ!」
――何としてでも、鉄兵の口をふさがねば。
オレの命がアブない!
無事に見つかった鉄兵を車に乗せて、オレは珍しく落ち込みモードに入っていた。
不注意で鉄兵を危険な目に合わせたのは、これで2度目……いや、3度目?
いくらプライベートとはいえ、保育士なのにイカンだろう……。
鉄兵に何事もなくて良かった。
それにしても。
ブンちゃんは出来たコだなー。
今日のことも、目を離したオレが悪いのに、第一声が「迷惑かけてごめんなさい!」だもんな。
怒るまーくんからもかばってくれて。
自分のことを棚上げして保育園にクレームつけてくるモンスターなんちゃらまがいのおかーさま方を相手にする身としては、新鮮つーか心にしみるっつーか。
信号が赤になったので、ブレーキをかけてハンドルに凭れた。
「……あれはまーくんじゃなくてもホレるよなー」
…………。
「龍せんせい、しんごうかわったよー」
「おっと」
ふと我に返って、アクセルを踏む。
…………。
――あれ。今の、言葉に出て……た?
嫌~な汗が背中を流れた、気がした。
「て……鉄兵? オレ、今、何か言った?」
「なにが?」
――ほっ。心の中の呟きだけだったみたいだ。
いや、本当にブンちゃんにホレたわけじゃないけど、冗談でもそんなことを言おうもんなら……。
………………下手したら沈められちゃうかもしんない………………。
考えるだけでオソロシイ;
「龍せんせい」
「どした?」
「ホレるって、なにー?」
――ぶっ!
「鉄兵」
「なあに?」
「何でも好きなモン買ってやるから、今の言葉は忘れろ。なっ?
何が欲しい? オモチャ屋に寄るか? それともケーキか? 両方でも良いぞ!」
――何としてでも、鉄兵の口をふさがねば。
オレの命がアブない!
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